昭和の新聞チラシに貼られた10円玉の謎｜懐かしの販促手法とその背景

昭和の時代、新聞の折り込みチラシは現在と異なり、ユニークな販促手法が多く見られました。その中でも特に珍しいのが、セロテープで10円玉が貼られたチラシです。「問い合わせの電話代として使ってください」とのメッセージが添えられたこの手法は、多くの人々の記憶に残っています。

この記事では、昭和のチラシ文化の一環として登場した「10円玉付きチラシ」の背景や目的、そして当時の広告戦略について詳しく解説します。

10円玉付きチラシとは？

このチラシは、主に企業や販売店が自社の商品やサービスを宣伝するために使ったもので、折り込み広告の一種でした。特徴的なのは、問い合わせを促すために、10円玉が実際に貼り付けられていたことです。

10円玉が貼られていた理由として、当時の公衆電話の通話料金が10円であったため、消費者が広告主に気軽に電話できるようにするためと考えられています。

このような広告手法が用いられた理由は、以下のような要因が挙げられます。

① 問い合わせを増やすための仕掛け

電話での問い合わせを促すために、実際に通話料となる10円を提供することで、消費者が気軽に連絡できるようにしました。

② インパクトのある広告戦略

普通のチラシでは見過ごされる可能性がありますが、10円玉が貼られていることで視覚的なインパクトが生まれ、消費者の興味を引くことができました。

③ 企業の誠意を伝える

「お客様に無駄な負担をかけずに問い合わせしてもらいたい」という企業側の姿勢を示すことで、信頼感を高める狙いもありました。

10円玉付きチラシが使われていたのは、おおよそ1970年代から1980年代にかけてとされています。当時は固定電話が主流であり、公衆電話も街中に多く設置されていました。

しかし、1990年代以降になると、公衆電話の利用率が減少し、携帯電話が普及するにつれてこの手法は自然と姿を消していきました。

昭和時代の新聞折り込みチラシには、10円玉付き広告のほかにも、次のようなユニークな販促手法が見られました。

① 割引券付きチラシ

店舗に持参すると、数十円引きや景品がもらえるクーポンが印刷されているチラシが多く配布されていました。

② 抽選付きチラシ

チラシにスクラッチ部分があり、削ると「当たり」が出ると景品をもらえるというもの。現在の「スクラッチくじ」に似た手法です。

③ 手書き風の広告

親しみやすさを演出するために、手書き風のデザインを取り入れたチラシも人気でした。

現在では、10円玉を貼り付ける広告手法はほぼ見られなくなりました。その理由として、以下のような要因が挙げられます。

① 電話料金の変化

かつての公衆電話は10円で通話できましたが、現在では最低30円以上かかる場合があり、10円では十分な役割を果たせなくなりました。

② 広告手法の多様化

インターネットの普及により、電話よりもWebサイトやSNSを利用した問い合わせが一般的になったため、電話に誘導する広告手法は減少しました。

③ セキュリティやコストの問題

実際に現金を貼ることで、盗難のリスクや印刷・封入コストが増加するため、企業側の負担が大きくなりました。

昭和の時代に見られた10円玉付きチラシは、消費者に問い合わせを促すためのユニークな広告手法でした。視覚的なインパクトがあり、企業の誠意を示す手段として使われていました。

しかし、時代の変化とともに公衆電話の利用が減り、インターネットを活用した広告手法が普及したことで、この広告手法は徐々に廃れていきました。

現在ではほとんど見られなくなったものの、昭和の広告文化を象徴する一つの興味深い事例として、懐かしさを感じる人も多いのではないでしょうか。