刑法では、殺人に関する罪は状況や動機によって異なります。「カッとなって起こした殺人」と「計画的な殺人」では、刑罰の重さが変わることがありますが、実際にどのような基準で判断されるのでしょうか?
この記事では、殺人罪の分類や刑罰の違い、裁判で考慮される要素について解説します。
殺人罪の分類と刑罰の違い
日本の刑法において、人を殺害した場合の罪には主に以下のような分類があります。
① 殺人罪(刑法199条)
相手を殺害する意図を持って人を殺した場合に適用されます。
- 刑罰:死刑または無期懲役、もしくは5年以上の有期懲役
② 傷害致死罪(刑法205条)
殺意はなかったものの、暴行や傷害を加えた結果、相手が死亡した場合に適用されます。
- 刑罰:3年以上の有期懲役(上限なし)
③ 過剰防衛による致死(刑法36条・38条)
正当防衛が認められるケースでも、行為が必要以上にエスカレートした場合、「過剰防衛」として刑罰が科されることがあります。
- 刑罰:状況により減刑される可能性あり
「カッとなって殺した」場合の刑の重さ
計画的に殺人を犯した場合と、突発的な状況で殺人に至った場合では、刑の重さに違いが出ることがあります。
① 計画的な殺人(殺意が明確)
事前に計画し、殺害の意図を持って実行した場合は、刑が重くなります。
死刑や無期懲役の可能性が高く、特に動機が悪質な場合は極刑が適用されることもあります。
② 突発的な殺人(カッとなって起こしたケース)
突然の感情の爆発によって相手を殺害してしまった場合、計画性がないため刑は比較的軽くなる傾向があります。しかし、殺意の有無によって殺人罪か傷害致死罪に分類され、傷害致死罪であれば懲役3年以上と、殺人罪より軽くなる可能性があります。
床屋の事件のようなケースではどうなる?
質問にある床屋の事件のようなケースでは、最初から殺意があったわけではなく、突発的な暴力によって相手が死亡したと考えられます。この場合、適用される罪は以下のようになる可能性があります。
① 傷害致死罪の適用
このケースでは、床屋の男性に明確な殺意があったわけではなく、突発的な暴力の結果として相手が死亡したため、傷害致死罪が適用された可能性が高いです。
② 過剰防衛の考慮
相手が先に暴力を振るったことで、床屋の男性は防衛行為を行いました。しかし、投げ飛ばすという行為が「必要以上の力の行使」と判断され、過剰防衛とみなされた可能性があります。
③ 5年程度の服役
傷害致死罪の場合、刑期の下限は3年ですが、状況によって減刑されることがあります。被害者が最初に手を出したことや、計画性がなかった点が考慮され、比較的短い5年程度の服役になったと考えられます。
まとめ
日本の刑法では、殺人に関する罪は「計画性」「殺意の有無」「暴行の程度」によって異なり、刑罰の重さも変わります。
計画的な殺人は極刑の可能性が高く、突発的な殺人は「傷害致死」として扱われる場合があり、比較的軽い刑罰が科されることがあります。
しかし、どのような場合でも「人を死なせた」ことには変わりなく、刑罰の重さに関係なく社会的な責任は重大です。法律の仕組みを理解し、犯罪を未然に防ぐ意識を持つことが重要です。