労働基準法における36協定(サンロクきょうてい)は、時間外労働や休日出勤を行うためには必要な労使協定です。多くの企業では、この協定を結んでいるか、届出を提出していますが、実際には時間外労働がどの程度で36協定が適用されるのか、どのような場合に届出が必要なのかについて疑問を持つ方も多いでしょう。この記事では、36協定の基本から、企業でよく見られる「残業前後の短時間労働」に関する取り扱いについて解説します。
1. 36協定の基本:時間外労働と休日出勤の定義
36協定は、労働基準法第36条に基づくもので、通常の就業時間を超えて働く時間(時間外労働)や休日に働く時間(休日出勤)について、労使間で協定を結び、所定の手続きを踏むことが求められます。この協定がなければ、時間外労働を行うことができません。
通常の勤務時間を超えた労働、つまり残業や休日出勤が発生する場合、その労働時間を具体的に記録し、協定を結んで届け出を行うことが義務付けられています。
2. 36協定が必要な「時間外労働」とは?
質問者が例示しているような、5分〜10分程度の短時間での勤務開始や勤務終了後の作業なども、厳密には「時間外労働」に該当する可能性があります。労働基準法では、労働時間の延長が生じる場合には、時間外労働として扱われ、その分の賃金や労働条件が適用される必要があります。
具体的には、勤務時間内に必要な作業(例えば、事務所の鍵を開ける、電気を消す、施錠作業など)も、労働時間として計算されるべき場合があります。このような場合、労働時間が公式に記録されていなければ、残業時間としてカウントされない可能性があります。
3. 短時間の作業に関する法的取り扱い
質問にあるような「5〜10分の作業」の場合も、時間外労働と見なされる可能性がありますが、その取扱いについては、労働基準監督署の指導に基づく場合が多いです。例えば、毎日数分程度の作業が続く場合、就業規則でその取り扱いを明確にしておく必要があります。
また、時間外労働として認識するかどうかの判断は、企業の就業規則に依存する場合もあります。例えば、業務を遂行するために一定の準備時間が必要な場合、それも業務の一部と認められ、結果的に時間外労働としてカウントされることがあります。
4. 36協定が未届でも違法性はないのか?
36協定を届け出ずに時間外労働を行った場合、基本的には違法となります。企業が時間外労働を行う際には、労使間で事前に協定を結び、その内容を労働基準監督署に届け出る義務があります。この協定が未届であれば、たとえ数分の残業であっても、法的に問題となる可能性があります。
ただし、実際には、企業によっては就業規則において「5分程度の短時間残業は計算しない」といった取り決めをしている場合もありますが、それでも36協定の届け出が必要です。法的なリスクを避けるためには、適切に手続きを行うことが求められます。
5. まとめ:時間外労働と36協定の重要性
時間外労働や休日出勤を行う場合、労働基準法に基づいた36協定が必要です。短時間の作業であっても、その内容によっては時間外労働として扱われ、適切な賃金が支払われるべきです。企業としては、従業員の労働時間を正確に管理し、36協定を結ぶことが法的に求められます。
企業が36協定を届出せずに運用している場合は、違法行為となる可能性があるため、正しい手続きを行い、従業員との間で適切な労働条件を確保することが非常に重要です。