担保制度の中でも、譲渡担保は長らく慣習法的に利用されてきた制度ですが、明確な法的根拠がないまま広く活用されてきた点で課題を抱えてきました。近年、民法や担保法制全体の見直しの中で、譲渡担保権の法制化が議論されており、企業実務や金融取引においても注目されています。本記事では、譲渡担保権の法制化に関するこれまでの経緯と今後の施行時期の見通し、実務への影響について整理します。
譲渡担保とは?その仕組みと現状
譲渡担保とは、債権者が債権を担保する目的で債務者から目的物の所有権を形式上譲り受け、弁済がなされれば返還するという担保の一形態です。民法上に明文の規定はありませんが、判例や実務により一定の効力が認められてきました。
とくに不動産や動産、債権の担保手段として、中小企業の資金調達や金融機関の担保管理において活用されています。
法制審議会における検討状況
譲渡担保権に関する明文化は、法制審議会の「民法・担保法制部会」で2020年代初頭から本格的に議論されています。特に2022年以降、債権譲渡や動産譲渡に関する制度整備の一環として、「譲渡担保権」の明文化と登録制度の創設が検討項目として挙げられました。
部会で示された方向性では、現行の「譲渡担保」「所有権留保」「債権譲渡担保」などを一括して包括的に規律する新しい担保権(仮称:新担保権)を導入し、これを登記・登録制度と連動させる構想が示されています。
施行時期の見通しと今後のスケジュール
2024年時点では、法制審議会の最終取りまとめが行われつつあり、法案提出の準備段階にあるとみられます。仮に2025年に法案が国会に提出され可決された場合でも、実際の施行は2027年〜2028年頃になる可能性が高いと予想されています。
これは、新担保権制度に対応した登記・登録インフラの整備、既存の担保実務との調整、新旧制度の経過措置の検討などに時間を要するためです。
実務・企業への影響と注意点
譲渡担保権が明文化されることで、これまで不明確だった第三者対抗要件の基準や優先関係が法的に明確化され、取引の透明性と安全性が向上する見込みです。特に以下の点で実務対応が必要となります。
- 契約書の様式変更:譲渡担保契約の記載方式や登記対応が変化する可能性があります。
- 社内手続・リスク管理:新制度に基づく債権管理や担保価値評価のルール整備が必要。
- 登記・登録コストの増加:新たな登録制度が導入された場合、事務負担や費用増が懸念されます。
これに備え、早い段階での社内研修・契約書の見直し・登記実務の確認などを進めておくことが推奨されます。
まとめ:譲渡担保権の法制化は目前、備えは今から
譲渡担保権の法制化は、2025年以降に法案提出、そして2027〜2028年頃の施行という流れが現実的と考えられます。明文化により実務は大きく変わる可能性があり、特に金融機関・不動産業・中小企業の担保管理業務には影響が及びます。
今後の法制審議会の動向を注視しつつ、社内体制の整備と情報収集を早めに行うことが、制度移行を円滑に乗り切るカギとなるでしょう。