仕事中や通勤中の事故に遭った場合、労災保険の利用が可能です。しかし、事故直後にその制度を知らず、加害者側の自賠責保険などに請求を始めてしまった方も少なくありません。この記事では、第三者行為災害としての労災利用について、途中から労災に切り替えることができるのか、またその手続き方法などを詳しく解説します。
そもそも「第三者行為災害」とは?
労災保険は、業務中または通勤中の事故に対して補償を行う制度です。加害者が存在する事故(交通事故など)の場合、「第三者行為災害」として、加害者側の責任を前提にしつつも、被災者の救済を優先して労災保険を使うことができます。
その際、加害者に請求すべき損害賠償額については、労災保険から国が立替払いをして、後に加害者(または保険会社)に国が請求する仕組みになっています。
すでに加害者側の保険に請求した場合の影響
事故後にすぐ加害者側の保険に請求してしまった場合でも、原則として労災保険への切り替えは可能です。事故から10日程度であれば、労働基準監督署へ「第三者行為災害届」を提出し、状況を説明すれば、遡って労災扱いにしてもらえるケースがあります。
ただし、加害者側の保険金をすでに受け取っていた場合、その金額に応じて労災給付が一部制限される可能性があります。申請前に必ず労働基準監督署や勤務先の労務担当に相談してください。
労災への切り替え手続きの流れ
- 勤務先の労災担当に事故報告と申請の意思を伝える
- 「労働者死傷病報告」と「療養補償給付支給請求書」を提出
- 加えて、「第三者行為災害届」と関係書類(事故状況報告・念書など)を用意
- 労働基準監督署で申請し、労災としての給付を受ける
申請時には、病院での診断書、事故発生状況のわかる資料、保険会社とのやりとり記録などが必要になることがあります。
労災を利用するメリットと注意点
労災保険は自己負担なしで治療を受けられる点が大きなメリットです。また、休業補償給付や後遺障害給付も整備されているため、民間保険よりも手厚い部分があります。
ただし、加害者側の保険金と二重に受け取ることはできません。労災に切り替える場合は、すでに受け取った保険金の扱いについて、事前に監督署と確認しましょう。
まとめ
事故後に加害者側の保険へ請求してしまっても、労災保険へ切り替えることは十分可能です。労災はあくまで「労働者の保護」を目的としており、10日程度の経過であれば、迅速に手続きを進めることで適用を受けられる可能性が高いです。
必要な手続きや書類は、労働基準監督署や職場の労務担当としっかり連携を取りながら進めましょう。後悔しないためにも、正しい知識と対応が大切です。