自己破産に伴う不動産処分の過程で、共有持分を家族に売却するケースは少なくありません。特に管財人が不動産を放棄し、家族間での売買契約によって持分の移転を行う場合、登録免許税や所得税などの課税関係について正しく理解しておくことが重要です。
家族間売買に伴う課税関係の基本
たとえ自己破産の影響下であっても、不動産の所有権移転が売買契約に基づいて行われる以上、通常の不動産取引と同様の税金がかかります。主なものは以下の通りです。
- 登録免許税:登記をする際に必要な税金で、売買による移転の場合は不動産の固定資産評価額の2.0%(原則)です。
- 所得税(譲渡所得税):売主に譲渡益がある場合に課されます。マイナスになる(赤字)場合は課税されません。
- 不動産取得税:買主(お母様)に課税され、評価額の3.0%が原則(住宅用の場合は特例あり)です。
自己破産と管財人による放棄の影響
管財人が不動産を「破産財団から放棄」した場合、その不動産は法的には破産手続から除外され、債務者(あなた)の自由財産となります。ただし、放棄されたからといって登記の義務がなくなるわけではなく、売買によって第三者に対抗できる権利移転をするには登記が必要です。
また、管財人からの放棄通知は一種の証拠文書として保存しておきましょう。不動産登記手続の際に添付資料を求められる可能性があります。
親子間の売買による特有の注意点
親子間での不動産売買は、税務署に「贈与ではなく実際の売買」であると証明できるよう、実勢価格と大きく乖離しない金額での取引、契約書の作成、実際の金銭授受の証拠(振込記録など)を確実に残しておくことが重要です。
形式的な売買や、過度に安い価格での譲渡と判断された場合、贈与税の課税対象とされるリスクがあります。
登記手続に必要な書類と手数料
持分の移転登記には以下の書類が必要となります。
- 売買契約書(印紙を貼付)
- 登記申請書
- 登記原因証明情報
- 本人確認資料(住民票・印鑑証明書など)
- 登録免許税(原則:固定資産税評価額×2.0%)
登録免許税は法務局に納付する必要があり、電子申請でも可能ですが、司法書士に依頼することでスムーズに手続きが進む場合もあります。
譲渡所得税がかかるケースと非課税の条件
売主が譲渡によって利益(=譲渡価額−取得費−譲渡費用)を得た場合、所得税・住民税が課税されます。しかし、実家の一部で取得価格と譲渡額がほぼ同等であれば、利益が発生せず、課税は発生しない可能性が高いです。
なお、譲渡益が生じた場合でも、居住用財産の3,000万円特別控除などの特例が適用される場合があります。詳細は税理士に相談するのが安心です。
まとめ
自己破産後に持分を家族に売却する場合でも、通常の不動産売買と同様に、登録免許税や場合によっては譲渡所得税が発生することがあります。特に親族間の売買においては、贈与とみなされないように取引実態の証明が必要です。管財人による放棄があっても、登記と税務の処理は慎重に行い、必要に応じて専門家(司法書士・税理士)へ相談しましょう。