AED使用時に服を脱がせる行為は強制わいせつ罪になるのか?法的リスクと社会的認識を整理する

街中や職場で突然人が倒れたとき、救命処置として自動体外式除細動器(AED)を使う場面に直面するかもしれません。その際、「服を脱がせる必要がある」「相手が女性だとためらう」という不安を抱く人は少なくありません。特に『強制わいせつ罪になるのでは?』という声も見られます。本記事ではAED使用時における服の処置とその法的・倫理的観点を整理し、不安なく救命行動をとるための知識を解説します。

AED使用時に服を脱がせる必要性

AEDのパッドは心臓を挟むように胸の上に直接貼る必要があります。パッドと肌の間に衣類があると、電気ショックがうまく伝わらず命に関わるため、服を開ける・脱がせる行為は適切な手順とされています。

多くのAEDにはハサミが内蔵されており、服を切ってパッドを装着するのが推奨されています。つまり、「肌を露出させる」のはわいせつ行為ではなく、医学的に必要不可欠な救命行為なのです。

法律的な観点:強制わいせつ罪との関係

刑法第176条の「強制わいせつ罪」は、相手の意に反してわいせつな行為を行った場合に成立します。ここで重要なのは「わいせつの意図(性欲を満たす目的)」があるかどうかです。

救命目的で倒れている人の胸元の服を脱がせる、または切る行為には、性的意図がないため、通常は強制わいせつ罪には該当しません。医学的必要性が認められる限り、違法性は問われないとされています。

実際に救命処置中のAED使用で刑事責任を問われた事例は、日本では報告されていません。

女性へのAED使用をためらう背景と現実

女性に対するAED使用が議論になりやすいのは、「見られること」「触られること」に対する社会的・文化的な配慮や誤解が背景にあります。SNSや一部メディアで『性加害にされかねない』という懸念が過剰に強調されることもあります。

その結果、「ためらいによる処置の遅れ」が命に関わるという本質的な問題が見過ごされがちです。公益財団法人日本AED財団などの公式ガイドラインでも、「性別を問わず迅速な救命処置を優先すべき」と明言されています。

トラブル回避のために知っておくべきポイント

  • 第三者の協力を求める:可能であれば他者と協力して処置を行い、透明性を保つ。
  • 処置の説明をする:意識がない場合でも、「AEDを使います。服を開けます」と声をかける。
  • 記録や目撃者を確保:救命中の状況が後で説明できるように、周囲に説明しながら行動する。

これらの行動は、倫理的にも法的にも正当性を担保する手段となりえます。

“女尊男卑”ではなく“慎重な配慮”の問題

「男性には迷いなく処置されるのに、女性には確認が必要なのは不平等」と感じる声も理解できますが、これは性別による優遇というより、社会的・文化的に根付いたプライバシー保護意識に基づく慎重な態度とも言えます。

救命をためらう理由が性別であってはならないのは当然です。大切なのは、「誰に対しても命を最優先に考える」意識と、「その行動に正当性があると自信を持てる知識」を社会全体で共有することです。

まとめ:AED使用は正当な救命行為、ためらわず行動を

倒れている人の命を救うために服を脱がせてAEDを使用することは、刑事的にも倫理的にも正当な行為です。性別に関係なく、救命の優先順位を忘れてはいけません。

私たちがすべきことは、ためらいによる「何もしないリスク」ではなく、「勇気を持って行動する知識と態度」を広めていくことです。安心してAEDを使える社会にするために、正しい理解を持ちましょう。

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