退去後に電気代の請求が続いていた――そんな思いもよらない事態に直面した方も少なくありません。特に、電気メーターが2つ存在する特殊な物件では、契約や解約の手続きに思わぬ落とし穴が潜んでいることがあります。今回は、退去済みの部屋で第三者が使っていた電気代を元居住者が支払ってしまったケースをもとに、トラブルの原因と対処法、そして今後の防止策について解説します。
ケースの概要:電気契約の誤解が生んだ「不当支払い」
ある方が退去したアパートは、2部屋をつなげた構造で、電気メーターが101・102の2つ存在していました。本人は101と102の電気契約をしていたにもかかわらず、退去時に契約を解除し忘れたことで、次の入居者が101のみの契約を行い、残された102の電気契約が前居住者名義のまま継続してしまいました。
その結果、退去後にもかかわらず約1年半にわたって新たな入居者が使用した102メーター分の電気代を、前居住者が支払うという状況が発生しました。被害額は累計10万円以上にのぼります。
このようなケースは「不当利得」に該当する可能性がある
民法703条に基づき、他人の財産で利益を得た場合、その利益は返還する義務があります。これを「不当利得」と言います。このケースでは、新しい居住者が前居住者の契約で電気を利用し、その費用が元入居者に請求されていたことから、法的には新居住者に返還請求が可能とされる可能性があります。
ただし、「過失相殺」の考え方により、前居住者が解約手続きを怠った点が一定程度考慮され、請求額が全額認められない場合もあるため、慎重な主張が求められます。
現実的な解決方法と対応ステップ
法的な責任の所在が曖昧なまま放置すると、泣き寝入りになりかねません。以下のステップで対応を進めましょう。
- 1. 支払い履歴の明細を整理:電力会社Tに連絡し、支払い明細とメーター番号(102)を明確に証明。
- 2. 管理会社・現居住者へ文書で通知:感情的な口頭のやりとりは避け、時系列と被害額をまとめた内容証明郵便で通知。
- 3. 話し合いが不調なら消費生活センターへ相談:公的機関が介入することで、トラブル解決の助言や調整が受けられます。
- 4. 必要なら簡易裁判所で調停または少額訴訟:金額が60万円以下であれば少額訴訟制度も利用可能。
類似トラブルを防ぐためのチェックポイント
引っ越し時には、電気・ガス・水道などのライフラインの解約は必須事項です。特にメーターが複数ある物件や、戸建てをシェアした物件では、物件内の設備構成を正確に把握することが大切です。
また、契約終了後に請求が続かないよう、以下の点をチェックしましょう。
- 契約書に記載された「使用場所」や「メーター番号」の確認
- 電力会社への「口頭での退去連絡」ではなく「書面またはウェブでの正式解約手続き」
- 退去前の検針結果を保管しておく
まとめ:感情よりも証拠と冷静な対処で取り戻す
退去後の電気代請求は、誰にでも起こり得るトラブルです。重要なのは、感情的にならず、記録・証拠を揃えて冷静に対処することです。支払いの責任は実際に電気を使っていた人にあり、法的な救済も十分に可能です。
まずは事実を整理し、必要に応じて公的機関や法律相談を活用して、納得のいく形で解決を目指しましょう。