会社法33条における検査役調査の省略と設立時取締役の調査義務の関係とは?

会社設立における財産の出資には、法的な調査義務が発生します。会社法33条では、原則として検査役の調査が必要とされつつも、同条10号により一定の条件を満たす場合にはその省略が可能とされています。では、検査役の調査が不要となった場合、設立時取締役による調査は完全に免除されるのでしょうか。本記事ではその論点について解説します。

会社法33条の概要

会社法33条は、設立時の財産出資(現物出資)について、その価値が適正であるかを担保するため、裁判所が選任する検査役による調査を原則として要求しています。しかし、条文の後半には10号までの例外規定が設けられており、その中に「一定の条件を満たす現物出資は検査役の調査を要しない」とするものがあります。

たとえば、市場価格が明確な上場株式や、帳簿価額が一定額以下の物品などが該当します。

第10号の例外規定とその意味

会社法33条10号は「その他法務省令で定める一定の財産」について、検査役の調査が不要である旨を規定しています。これは、主に出資対象が価値評価しやすいものである場合、制度の簡素化を図るために設けられたものです。

しかしこの「調査不要」は、検査役による調査を免除するという意味であり、設立時取締役の調査義務までも免除するわけではありません。つまり、検査役が不要な場合でも、設立時取締役による調査義務は依然として残ります。

設立時取締役の調査義務とは

会社法30条第3項・第4項に基づき、設立時取締役には、財産の価格や出資の履行状況について調査を行い、設立登記前にこれを確認する義務があります。検査役による調査が不要な場合でも、これは代替されるわけではなく、設立時取締役が責任をもって適正な評価を行う必要があります。

例えば、帳簿価額による現物出資を受ける場合でも、帳簿の真実性や市場価格との妥当性の確認を怠れば、設立後に株主から責任追及される可能性があります。

実務上の注意点と誤解されがちなポイント

実務では、検査役の省略=調査そのものの省略と誤解されることがあります。しかし、会社法の趣旨は出資評価の適正性を担保することにあるため、調査主体が「裁判所選任の検査役」から「設立時取締役」に代わっただけで、調査義務が消滅したわけではありません。

このため、設立時取締役は出資対象物の市場価格や、鑑定書・取引事例などの資料を用いて、調査報告書を作成するなどの対応が必要です。これにより、後日の責任追及を回避できます。

まとめ

会社法33条10号により検査役の調査が不要となった場合でも、設立時取締役の調査義務が免除されるわけではありません。あくまで「誰が調査するか」が切り替わるだけであり、調査の実施自体は必須です。誤解による手続き漏れや調査義務違反を防ぐためにも、設立時には専門家の助言を受けながら慎重に対応しましょう。

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