法律にはさまざまな分野がありますが、中でも「民法」と「民事訴訟法」は混同されやすい存在です。実際、法学を初めて学ぶ人の中には「民事訴訟法は民法の一部なのか?」と感じる人も少なくありません。この記事では、民事訴訟法がなぜ民法と密接に関係しているのか、その背景や役割をわかりやすく解説します。
民法と民事訴訟法の基本的な役割の違い
まず押さえておきたいのは、民法と民事訴訟法はそれぞれ異なる法分野であるという点です。民法は「私的な権利義務の内容」——たとえば、契約、所有権、損害賠償などのルールを定めています。一方で、民事訴訟法は「その権利義務が争われたときに、どのように解決するか」という手続きを規定しています。
たとえば、「貸したお金を返してもらえない」という状況では、貸し借りの契約や返済義務についてのルールは民法で定められています。これに対し、裁判を起こして返済を求める手続きは民事訴訟法に基づいて進められます。
「実体法」と「手続法」の関係性
法律の世界では、前述の民法のような内容のルールを「実体法」、民事訴訟法のような裁判のルールを「手続法」と呼びます。手続法は、実体法に基づく権利を実際に行使するための「道具」として機能しています。
つまり、民事訴訟法は、民法によって定められた権利や義務を実現する手段として不可欠であり、その意味で非常に密接な関係にあるのです。
なぜ民事訴訟法が民法と“セット”で学ばれるのか
大学の法学部や司法試験などでは、民事訴訟法はしばしば民法と並んで扱われます。これは、民法のルールを理解しただけでは、実際のトラブル解決には不十分だからです。たとえば、
- 誰が証拠を提出すべきか
- 訴訟の流れ(訴状、答弁書、口頭弁論など)
- 裁判所がどのような判断を下すか
といった具体的な運用を理解するには、民事訴訟法の知識が必要です。そのため、法学教育や実務では両者を一体的に学ぶことが求められます。
具体例:交通事故のトラブルを法的に解決する場合
たとえば、交通事故に遭い、加害者に損害賠償を請求したいとします。加害者に任意で支払いを拒否された場合、被害者は裁判で賠償を請求することになります。
このとき、損害賠償の根拠は民法709条(不法行為)ですが、それを実現するためには訴状の提出や証拠の収集・提出、判決の執行といった手続きを経る必要があります。ここに登場するのが民事訴訟法です。
民法と民事訴訟法の違いを誤解しやすい理由
民法と民事訴訟法が混同されやすいのは、いずれも“民事”という同じ対象を扱っているからです。ですが、民法が「何が正しいか」を定めているのに対し、民事訴訟法は「どうやってその正しさを裁判で証明するか」に主眼を置いています。
この視点を持つことで、両者の役割を明確に区別しやすくなります。
まとめ:民事訴訟法は“民法を実現するためのルール”
結論として、民事訴訟法は民法の一部ではなく、独立した法分野です。しかし、民法のルールを現実に実行するためには民事訴訟法の力が必要不可欠であり、この意味で“民法の延長線上”にあるとも言えるでしょう。
民法が「内容」、民事訴訟法が「手段」として、それぞれの役割を理解することが、法律全体を体系的に捉える第一歩です。