刑事事件において、どのような被告人にも弁護士がつくという制度に疑問を持つ方は少なくありません。「救いようのない犯罪者にまで弁護士がつくのか?」という問いに対して、この記事では弁護士の役割、法制度の背景、そして倫理観について、わかりやすく丁寧に解説します。
なぜどんな人にも弁護士がつくのか?
刑事裁判においては、「すべての人に公平な裁判を受ける権利がある」という憲法の原則に基づき、被告人には弁護人をつける権利があります。これは有罪が確定する前提で判断されるものではなく、「無罪の可能性を含めて公平に判断されるべき」という思想に基づいています。
そのため、どれだけ世間の非難を浴びている被告人であっても、弁護士がつくことは法律によって保証されており、被告人の人権を守るための重要な制度です。
弁護士は犯罪を正当化しているのか?
弁護士の役割は、犯罪を「正当化」することではなく、被告人の権利を守り、法の適正な運用を監視することにあります。例えば、自白が強要された疑いがある、証拠の収集方法が不適切である、あるいは量刑が過度である――こういった点をチェックするのが弁護士の仕事です。
これにより、国家権力による過剰な処罰や不当な判決を防ぎ、真に公正な裁判が実現されるのです。これは「罪を軽くする」ためではなく、「正しく裁く」ための制度です。
弁護士の倫理と感情のバランス
もちろん、弁護士自身も人間です。凶悪な事件や社会的に非難されるような被告人に対して、感情が揺れることはあります。しかし、職業倫理として、個人的感情とは切り離して職務を全うする姿勢が求められます。
たとえば、死刑判決が予想されるような被告人を担当する弁護士でも、その人権を守ることこそが「法治国家としての誇り」であるという信念で職務にあたっている方が多いです。
実際の事例:公的弁護人制度と義務
日本では、被告人に弁護士がいない場合、国が選任する「国選弁護人」制度があります。これは本人が望まなくても、一定の罪の重さを超える場合、自動的に弁護人がつく制度です。
例えば、無期懲役や死刑が予想される事件では、必ず弁護人がつきます。これは、たとえ被告人が罪を認めていたとしても、裁判の過程で法的な不備がないかを確認するための手段として機能しています。
まとめ:弁護士は「法の守り手」である
どんな被告人であっても弁護士がつくのは、「法の支配」に基づいた制度であり、社会全体の安全と公正を守るために必要な仕組みです。弁護士は「悪をかばう者」ではなく、「制度の健全性を担保する者」であるという視点で見ると、その重要性がより明確になります。