近年、SNSやネット上で『株式会社○○○』と名乗るアカウントやプロフィールを見かけることがあります。実際に法人登記されていないにもかかわらず、個人が勝手に『株式会社』と名乗る行為には法的な問題があるのでしょうか?この記事では、会社法を中心に、SNS上での名称使用に関する法律上のリスクや注意点を解説します。
会社法上『株式会社』の使用は厳しく制限されている
日本の会社法第6条では、登記された株式会社でなければ、商号に『株式会社』という文字を用いてはならないと明確に定められています。これは看板や名刺、広告などのビジネス用途に限らず、SNSアカウントの名称でも同様に適用されると解釈されています。
例えば、個人が登記していないのに『株式会社○○○』とSNSで名乗った場合、それがあたかも法人格を持つ企業であるかのように第三者に誤認される可能性があり、法的なトラブルに発展することもあります。
SNSでの使用が“商号”にあたるかの判断基準
商号とされるかどうかは、その名称が営業活動に使われているかどうかが一つの判断基準です。たとえ個人の趣味アカウントであっても、企業っぽく装った名称を使ってサービスを提供していたり、広告収入を得ていたりすれば、商号とみなされるリスクが高くなります。
一方で、明らかにパロディやジョークの文脈であり、誤認の余地がない場合には、実質的に問題にならないケースもあります。ただし、判断は非常にグレーであり、相手や内容次第では法的警告や差止請求を受けるリスクがあります。
実例:勝手に『株式会社』を名乗ってトラブルになったケース
過去には、未登記の団体が『株式会社』を名乗って活動した結果、消費者から誤解を招いたとして行政指導を受けた例があります。また、SNSでも誤認を招くようなビジネス的な発信をしていた場合に、正規の法人から訴えられたというトラブルも報告されています。
特に、同名の法人が存在している場合、その会社の信用や商標を侵害することにもつながりかねません。
『合同会社』『株式会社風』などの名前はどうか?
『株式会社っぽい名前』であればセーフなのでは?と考える方もいるかもしれませんが、『合同会社○○』『会社○○』『○○カンパニー』といった名称も同様に注意が必要です。第三者に法人格があると誤認されるおそれがある場合、商号の不正使用と判断されることがあります。
したがって、SNSで個人が活動する際には、屋号やハンドルネームに企業形態を想起させる語句を使うことは慎重に検討すべきです。
まとめ:軽い気持ちでの使用が大きなトラブルに
『株式会社○○○』という名称をSNSで使うことは、たとえ個人の遊び感覚であっても、会社法違反や商号権の侵害、さらには信用毀損にまで発展するおそれがあります。
法律的に問題がないかどうか不安がある場合は、事前に弁護士などの専門家に相談するのが最も安全です。名称の選び方ひとつで信用やトラブルの有無が大きく左右されるため、正しい知識を持ってSNS運用を行いましょう。