車同士の接触事故で、当初は「物損事故」として処理されたものが、後日「人身事故」に切り替えられることがあります。これは決して珍しいことではなく、事故の直後にはわかりにくい身体への影響や、保険対応の違いが関係しています。本記事では、切り替えの理由とその背景をわかりやすく解説します。
物損事故と人身事故の違い
物損事故とは、車やガードレールなど「物」に対する損害があった事故を指します。一方、人身事故は「人の身体」に被害が出た事故で、打撲やむち打ちなどの症状が対象になります。
物損事故として処理すると、警察は事故としては記録しますが、加害者に対する刑事処分や行政処分が基本的にありません。一方で、人身事故になると、処罰対象としての扱いや、加害者の運転免許の点数にも影響します。
事故直後に症状が出にくい理由
事故直後はアドレナリンの影響などで痛みを感じにくいことがよくあります。軽い衝突や低速での接触でも、首や腰などに負担がかかり、時間が経ってから痛みが出てくるケースも少なくありません。
例えば、「むち打ち症(頚椎捻挫)」は事故当日ではなく、1〜2日後に症状が出てくることも多いため、最初は物損事故として処理していても、後日身体に異常が出てきた場合、人身事故へ切り替えが行われるのです。
人身事故への切り替えのメリット
人身事故へ切り替えると、自賠責保険の範囲内で治療費や通院交通費、慰謝料などの補償を受けられる可能性があります。物損事故のままだと、こうした補償は基本的に保険会社との示談交渉に任されるため、被害者にとって不利になることも。
また、診断書を警察に提出し、正式に「人身事故」として受理されることで、治療中の事故証明が取りやすくなり、保険請求がスムーズになるという実務上の利点もあります。
「ほんの少し当たっただけ」で痛みは出るのか?
たとえ時速10km程度の接触でも、身体に加わる衝撃は想像以上です。特に首や背中、腰などは衝撃の逃げ場が少なく、むち打ちや筋肉・関節の炎症を起こしやすい部位です。
過去の判例でも、軽微な衝突であっても診断書に基づき人身事故が認められた例は多数存在しています。痛みや違和感があれば、事故後すぐに医療機関を受診することが大切です。
人身事故への切り替え手続き
事故発生から日数が経っていても、医師による診断書があれば、所轄の警察署に提出して人身事故への切り替えを申請できます。一般的には事故から10日以内が目安とされていますが、症状や理由があればその限りではありません。
保険会社にもこの事実を伝え、適切な補償を受けられるように準備しておきましょう。
まとめ
物損事故から人身事故への切り替えは、事故の被害を正当に補償してもらうための正当な対応です。軽微な衝突でも身体に負担がかかることがあり、後から症状が出るケースは珍しくありません。早めの受診と警察・保険会社への報告が、トラブルを防ぐ鍵となります。