近年、SNSやメッセージアプリを通じた個人間のやり取りが増える中、プライベートなチャットでのデマ拡散が社会問題となっています。特に、特定の個人に対する虚偽の情報が複数人に共有されるケースでは、名誉毀損や侮辱罪などの刑事責任が問われる可能性があります。本記事では、個人チャット内でのデマ拡散がどのような法的問題を引き起こすのか、また被害者がどのように対応すべきかについて解説します。
デマ拡散が引き起こす法的責任
日本の刑法において、デマを流すこと自体を直接的に処罰する規定は存在しません。しかし、デマの内容やその影響によっては、以下のような罪に該当する可能性があります。
- 名誉毀損罪(刑法第230条):公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した場合に成立します。たとえ事実であっても、公然と述べることで名誉を傷つけたと判断されれば処罰の対象となります。
- 侮辱罪(刑法第231条):事実を摘示せずに、公然と人を侮辱した場合に成立します。具体的な事実を述べなくても、人格を否定するような発言があれば該当する可能性があります。
- 信用毀損罪・業務妨害罪(刑法第233条):虚偽の風説を流布し、他人の信用を毀損したり、業務を妨害した場合に成立します。
これらの罪は、デマが不特定多数に伝わることで成立することが多いですが、個人チャット内であっても、複数人に共有されることで「公然性」が認められる場合があります。
個人チャットでのデマ拡散と「公然性」
「公然性」とは、不特定または多数の人が認識できる状態を指します。個人チャットでのやり取りが少人数であっても、その内容がさらに他者に転送されたり、スクリーンショットが拡散された場合、「公然性」が認められる可能性があります。
例えば、ある人物が特定の個人について「過去に逮捕されたことがある」といった虚偽の情報を複数人に送信し、その情報がさらに他者に共有された場合、名誉毀損罪や侮辱罪が成立する可能性があります。
被害届の提出と証拠の収集
デマの被害を受けた場合、警察に被害届を提出することができます。ただし、被害届が受理されるためには、以下のような証拠の収集が重要です。
- チャットのスクリーンショット:デマが送信された日時、送信者、内容が明確にわかるように保存します。
- 拡散の証拠:他者に転送された形跡や、SNS上での拡散状況などを記録します。
- 被害の具体的内容:デマによって受けた精神的苦痛や社会的影響などを詳細に記録します。
これらの証拠をもとに、最寄りの警察署に相談し、被害届の提出を検討しましょう。事前に警察署に連絡し、相談の予約を取るとスムーズです。
民事訴訟による対応
刑事責任を追及するだけでなく、民事訴訟を通じて損害賠償を求めることも可能です。デマによって名誉を傷つけられた場合、慰謝料の請求や、デマの削除要求などが考えられます。
民事訴訟を検討する際は、弁護士に相談し、適切な手続きを進めることが重要です。特に、加害者の特定や証拠の収集には専門的な知識が求められるため、専門家の助言を仰ぎましょう。
デマ拡散を防ぐための対策
デマの拡散を防ぐためには、以下のような対策が有効です。
- プライバシー設定の強化:SNSやチャットアプリのプライバシー設定を見直し、情報の共有範囲を制限します。
- 個人情報の管理:安易に個人情報を共有せず、信頼できる相手とのみ情報を交換します。
- デマの拡散防止:虚偽の情報を受け取った場合、安易に他者に共有せず、情報の真偽を確認します。
これらの対策を講じることで、デマの被害を未然に防ぐことが可能です。
まとめ
個人チャット内でのデマ拡散であっても、複数人に共有されることで「公然性」が認められ、名誉毀損罪や侮辱罪などの刑事責任が問われる可能性があります。被害を受けた場合は、証拠を収集し、警察への被害届の提出や、民事訴訟による損害賠償の請求を検討しましょう。また、デマの拡散を防ぐためには、日頃からプライバシー設定の見直しや、情報の管理を徹底することが重要です。