精神科医の対応に納得できないときに知っておきたい法的対処と相談先

精神疾患を抱える家族のケアは、時に想像を絶する困難を伴います。中でも、入退院に関する判断や医師とのコミュニケーションは、精神的な負担が大きく、重大な選択を迫られる場面も少なくありません。この記事では、医師とのやりとりに納得できなかった場合にとれる法的手段や、どこに相談すべきかについて具体的に解説します。

医師の言動が問題とされるケースとは

医師は専門職として、高い倫理観と患者・家族への敬意をもって対応する義務があります。しかし、現実には高圧的な態度や不適切な言動により、家族が精神的苦痛を受けることがあります。

例えば、「あなたがそんなだから娘さんが良くならない」などの発言は、受け取り方によっては家族を不当に責めるように感じられる可能性があります。ただし、こうした発言が直ちに法的責任を問えるとは限りません。発言が名誉毀損や侮辱罪、または医療過誤に該当するかどうかは、状況や内容、影響の程度によって判断されます。

名誉毀損・侮辱罪に該当する可能性

日本の刑法では、以下のようなケースで刑事責任が問われる可能性があります。

  • 名誉毀損罪(刑法第230条):具体的な事実を摘示し、公然と人の社会的評価を下げた場合。
  • 侮辱罪(刑法第231条):事実を示さずに公然と相手を貶めた場合。

これらが成立するには「公然性」が必要とされます。電話でのやりとりのように第三者がいない状況では、公然性が認められにくいため、刑事事件として訴えることは困難な場合が多いです。

ただし、著しく人格を否定するような暴言や威圧的な言動が継続的にあった場合には、別途民事での損害賠償請求の対象となる可能性があります。

医療機関・医師に対する民事的な責任追及

医師の言動が家族に精神的損害を与えた場合、民事訴訟により損害賠償を請求することが可能です。要件は次の通りです。

  • 精神的損害を被った明確な証拠(録音、メモ、証言など)
  • 医師の言動が社会通念上、許されないと判断される内容
  • その言動によって精神的苦痛や二次的な被害が発生したこと

とはいえ、医師の発言は「治療方針の一環」として説明責任の範囲に含まれると主張される場合もあり、個別ケースでの判断が必要です。

相談先として有効な窓口

訴訟に踏み切る前に、まずは専門の相談窓口に連絡し、法的観点や医療倫理の観点から助言をもらうことが重要です。以下のような機関に相談できます。

感情的になりやすい状況だからこそ、第三者の視点で事実を整理し、適切な対応をとることが大切です。

遺族としての対応と心のケア

大切な家族を失った後、遺族が精神的ショックから立ち直るには時間が必要です。同時に、医療機関や担当医への不信感が残ることも少なくありません。場合によっては、医療事故調査制度などを活用して、経緯の検証を求めることも可能です。

また、家族としての苦悩や後悔を誰かに話すことで心の整理が進むこともあります。自死遺族の会やカウンセラーのサポートを受けることも検討してください。

まとめ

精神疾患の治療において、医師と家族の連携は非常に重要です。しかし、医師の言動が家族に強いショックを与えることもあり、その内容によっては法的に問題となる場合もあります。ただし、誹謗中傷として直ちに訴えるのはハードルが高く、まずは第三者機関への相談や証拠の整理から始めることが現実的な対応です。必要に応じて法的手段を検討しながら、自分自身の心のケアも怠らないようにしてください。

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