駐車中の愛車に他人の不注意で傷がついた場合、多くは相手側の賠償責任保険(個人賠償責任保険など)で修理費用が補償されます。しかし、修理はせず、その金額を「次の車の購入資金」に充てたいと考える方も少なくありません。実際にそれは可能なのでしょうか?保険制度と法律の観点から詳しく解説します。
保険金は「修理費用」のため?現金受け取りはできるのか
自動車損害に対する保険金は、損害賠償の一環として支払われるものであり、被害者が実際にそのお金をどう使うかは原則として自由です。つまり、修理をしない選択をすることも違法ではありません。
たとえば、20万円の修理見積もりが出て、それを基に保険会社が支払った場合、その金額は被害者のものであり、必ずしも修理に使う必要はありません。
相手側の保険会社との交渉と確認ポイント
ただし、保険会社が直接修理工場へ支払いをする形式を取る場合もあります。このケースでは「実際に修理しないと支払いできない」とされることがあります。
現金で受け取るには、見積書を提出したうえで「修理は希望しない」と被害者から明言する必要があります。さらに、相手方の保険会社がその形式で支払いを認めるかどうか、事前に確認が必要です。
修理しないことによるリスクと注意点
修理をせずにそのまま乗り続ける場合、以下のような注意点があります。
- 将来の下取り価格に影響する
- 別の事故で同じ箇所に損傷が起きた場合、保険請求ができなくなる可能性がある
- 安全性に関わるダメージを放置すると、車検不適合になる恐れも
目立たない傷でも「構造部への影響があるか」などを確認しておくことが大切です。
車を買い替える場合の損害賠償の扱い
車の買い替えを前提に修理を希望しない場合でも、「現金での損害賠償」という形で受け取ることは法的に可能です。損害賠償の本質は「損失の補填」であり、その補填方法(現金か現物か)は当事者間の合意次第です。
過去の判例などでも、「修理実施の有無にかかわらず、見積額に基づいて相当な範囲の賠償金を受け取れる」と判断された例があります。
実際の手続きフローとポイント
現金受け取りを希望する場合は、以下の流れを意識しましょう。
- 修理見積書を取得(信頼できる業者で)
- 相手保険会社へ「修理は希望せず、金額での賠償を希望」と伝える
- 合意後に示談書や承諾書に署名
- 保険金が本人の口座に振り込まれる
この時、示談書に「この支払いをもって本件は解決とする」などの文言がある場合は、よく内容を確認してからサインしましょう。
まとめ:修理せずに現金を受け取ることは可能。ただし交渉と確認が鍵
車の損傷に対する保険金は、必ずしも修理に使わなければならないものではありません。被害者の自由な意思で「修理しない」ことを選択し、見積額に基づいた賠償金を現金で受け取ることは原則可能です。
ただし、実際の支払い形式や条件は保険会社の運用方針によって異なるため、修理せずに受け取る意思がある場合は早めに保険会社へ明確に伝え、調整しておくことが円滑な対応につながります。