暴行被害に遭った際、加害者に対して慰謝料を請求したいと考えるのは当然の権利です。しかし、その請求の方法によっては「恐喝」と受け取られる可能性もあるため、慎重に進める必要があります。本記事では、慰謝料請求と恐喝の違い、適切な文面の作成方法、示談交渉のポイントについて解説します。
慰謝料請求と恐喝の違いとは?
まず知っておきたいのは、正当な損害賠償請求は恐喝にはあたらないということです。民法では、不法行為(たとえば暴行)によって被害を受けた場合、損害賠償を請求することが認められています(民法709条)。
ただし、請求の方法が「脅迫的」「不当な金額」「社会通念上相当でない圧力」を伴うと、刑法上の恐喝罪(刑法249条)に問われるおそれがあります。たとえば、「支払わなければ会社や家族にバラす」といった文言は明らかにNGです。
LINEなどでの請求文面は注意が必要
近年、LINEなどのSNSを使って慰謝料請求を行う例が増えていますが、文字として残るため、文面は特に慎重に作成する必要があります。次のようなポイントに配慮することで、法的リスクを避けやすくなります。
- 冷静かつ丁寧な言葉遣いを心がける
- 金額と支払期日を明記する
- 「被害届取り下げを検討」として確約ではなく意向表明にとどめる
- 相手に選択肢(支払い・未支払い)を与える表現にする
上記を踏まえた適切な一例としては、以下のような文面が考えられます。
「このたびの件について、すでに被害届を提出しております。心身の影響を鑑み、慰謝料として8万円をご請求いたします。支払い期限は6月2日とさせていただきます。期日内にご対応があれば、示談の可能性も含め検討させていただきます。こちらとしても冷静に解決を図りたいと考えておりますので、ご対応のほどよろしくお願いいたします。」
示談交渉の進め方と弁護士の活用
示談を円滑に進めるためには、弁護士を通じた正式な内容証明郵便による通知が最も確実で安全です。感情的にならず、法的に適切な文書で請求することで、加害者にも誠実な対応を促すことができます。
また、示談書には「金銭の支払い」「被害届の取り下げ」「再発防止」などの内容を明記し、署名・捺印を得ることが望ましいです。書面のテンプレートは法務省や弁護士サイトでも入手可能です。
法的に有効な慰謝料請求とは
慰謝料請求が有効となるには、次の条件が整っている必要があります。
- 暴行の事実を裏付ける証拠(診断書、写真、録音など)
- 被害者としての意思を明示している
- 請求額が相当である(一般的に10万円前後は相場内とされる)
逆に、証拠が曖昧だったり、金額が不当に高額であった場合は、請求の正当性が疑われる恐れがあります。あらかじめ弁護士や法テラスで相談しておくと安心です。
まとめ
暴行事件の加害者に対して慰謝料を請求すること自体は法的に認められています。ただし、請求方法や文面によっては誤解を招くリスクがあるため、冷静かつ慎重に対応することが大切です。必要に応じて弁護士の助言を受け、円満な解決を目指しましょう。