守秘義務契約(NDA)は一方的に解除できるのか?解除の可否と法律的な背景をわかりやすく解説

ビジネスや雇用関係において頻繁に交わされる守秘義務契約(NDA)。「秘密情報を他言しない」という基本ルールのもと、機密性の高い情報の漏洩を防ぐために活用されています。しかし実際にこの契約が交わされた後、「掲示した側(情報提供者)が一方的に守秘義務を解除できるのか?」「掲示された側(情報を受け取った者)の許可は必要ないのか?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。この記事では、守秘義務の法的性質と契約解除に関するポイントを実例とともに解説します。

守秘義務契約(NDA)の基本構造とは

守秘義務契約は、ある当事者が提供する秘密情報を、もう一方の当事者が無断で第三者に開示・使用しないことを約束する契約です。多くの場合、以下の3つの構成で成り立ちます。

  • 情報の定義(秘密情報とは何かを明確に定義)
  • 義務の範囲(どのような行為が禁止されているか)
  • 守秘期間(契約が終了しても一定期間は継続されることが多い)

この契約は双方向型(双方が秘密を共有)または片方向型(一方が情報提供)がありますが、どちらの場合も「情報提供者の意志」で解除できるとは限りません。

守秘義務は提供者が一方的に解除できるのか?

結論から言えば、守秘義務契約は原則として契約当事者間の合意により成り立っているため、提供者が一方的に解除することは原則できません。守秘義務は「契約の一部」であるため、契約を解除するには通常、解除条項に基づく要件を満たすか、相手方の同意が必要です。

ただし、例外的に次のようなケースでは解除が認められる可能性もあります。

  • 契約に「解除自由条項」がある場合:提供者の通知のみで守秘義務を解除できる旨が明記されている
  • 秘密情報の公知化:情報がすでに第三者により一般公開されている場合、守秘義務の実効性が失われる
  • 裁判所・行政の命令:法的要請により情報開示が求められる場合

つまり、契約書の文言に解除の条件が明記されていない限り、情報提供者の一存では解除できないのが原則です。

守秘義務解除の手続きと合意方法

守秘義務を解除したい場合は、契約の当事者同士が明示的に「守秘義務を解除する旨の合意」を交わす必要があります。通常は以下のような流れになります。

  1. 解除の申し出(提供者から受領者へ)
  2. 解除内容の交渉(解除範囲、時期、記録の廃棄など)
  3. 合意書の締結(書面または電子契約)

例として、守秘義務の解除合意書の一文は以下のようになります。

「本契約に基づく守秘義務について、甲乙は本書面をもって解除することに合意する。」

このような合意があれば、掲示された側(受領者)は以後、その情報を自由に利用または開示することが可能になります。

守秘義務の違反とリスク

守秘義務を解除せずに秘密情報を開示すると、損害賠償請求や差止請求の対象となる可能性があります。特に企業間取引においては、以下のようなリスクが現実に起こります。

  • 契約違反による金銭的損害請求
  • 取引先との信用失墜
  • 業務提携・開発中止などの実害

実際の事例では、秘密保持契約に違反して製品仕様を外部に開示したことにより、約2000万円の損害賠償が命じられたケースもあります。解除の有無が明確でない限り、守秘義務の対象情報を扱う際は慎重を期すべきです

まとめ|守秘義務は原則「相互合意」でしか解除できない

守秘義務契約は、たとえ情報提供者であっても一方的には解除できないのが原則です。解除には相手方との合意や契約条項に基づく手続きが必要であり、勝手に解除・開示することは契約違反となり得ます。

秘密情報の取り扱いに不安がある場合や、解除を検討する際には、弁護士など法律の専門家に確認しながら慎重に対応することが重要です。契約書の文面をしっかり確認し、書面による明確な合意を残すことが、安全かつ円滑なビジネス関係を保つ鍵となります。

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