離婚に際して子どもの戸籍をどちらの親に入れるかは、多くの家庭で悩まれるポイントです。特に「仲が悪くない」「親権は母親だが戸籍は夫側のままにしたい」といったケースでは、子どもの戸籍を元夫側に残しておくことで何か問題が起こるのか、気になる方も多いでしょう。本記事では、離婚後に子どもの戸籍を夫に残した場合の法的影響や注意点を詳しく解説します。
戸籍と親権は別物
まず基本として知っておきたいのは、戸籍と親権は法律上まったく別の概念だということです。親権者は家庭裁判所や協議によって決定され、戸籍上どちらに属しているかとは関係ありません。つまり、たとえ子どもが夫の戸籍に残っていたとしても、母親が親権者であればその効力に影響はありません。
たとえば、子どもと母親が同じ住所に住み、学校や病院などでの手続きも母親が行っていても、戸籍だけは夫のままであるという状態は、法的に許容されます。
子どもの戸籍を移さなくても問題ないケース
以下のようなケースでは、子どもを夫側の戸籍に残す選択をしても大きな問題になることは少ないです。
- 両親の関係が良好で、今後も父親が関与していく予定がある
- 子どもが父方の名字を使い続けたいという意思がある(学籍や交友関係の都合など)
- 将来的に再婚予定がなく、戸籍の再移動の必要性が低い
これらの場合、無理に戸籍を母側へ移す必要はないと判断する家庭もあります。
戸籍を移す必要が出てくる場合とは
一方、以下のような場面では戸籍の移動が必要・望ましいケースもあります。
- 母親が再婚し、子どもと新しい戸籍を作りたい場合
- 学校や行政手続きで戸籍の提出を求められ、説明が煩雑になる
- 将来的な相続や名字変更の手続きを円滑にしたいと考えている
これらのケースでは、「入籍届」(正式には「子の氏の変更許可申立て」+「入籍届」)を通じて、家庭裁判所の許可を得て子どもを母親の戸籍に移すことが可能です。
名字(氏)が異なることへの影響
子どもが父親の戸籍に残るということは、そのまま「父の姓」を使い続けることになります。一方で、母親が旧姓に戻っている場合、母子で姓が異なることになります。これが原因で、以下のような場面で説明を求められることがあります。
- 学校の入学時や健康保険証の申請
- 銀行や公共機関での本人確認
- パスポートやビザの申請時
とはいえ、その都度「親権者が母であること」を証明できれば、大きな問題になることはほとんどありません。
まとめ:戸籍を夫のままでも大丈夫だが事前に検討を
離婚後に子どもが夫側の戸籍に残っていても、親権者が母親であるならば法的な問題はありません。ただし、将来的な再婚、名字の違いによる説明の煩雑さなどを見越して、戸籍を移すかどうかを決めるのが良いでしょう。
戸籍は一度移すと元に戻すのが大変です。焦らず、家族全体の将来像を見据えて判断することが大切です。迷う場合は、家庭裁判所の無料相談や法テラスなどの専門機関に相談するのもおすすめです。