現代では多様なライフスタイルが認められつつあり、事実婚を選ぶカップルも増えています。しかし、日本ではいまだに法律婚を選択する人が圧倒的多数を占めています。遺言書を用いれば相続面でもある程度の対応が可能にもかかわらず、なぜ多くの人が法律婚を選ぶのでしょうか?本記事では、その背景や実務上の違いを詳しく解説します。
法律婚と事実婚の基本的な違い
法律婚とは、婚姻届を役所に提出して受理されることで法的な夫婦関係が成立する結婚形態です。一方、事実婚は婚姻届を出さずに共同生活を送り、社会的に夫婦と認識されている状態を指します。
法律婚:法的効力が強く、戸籍や相続、税制上の扱いが明確
事実婚:自由度はあるが、法的保護には限界がある
たとえば、法律婚では配偶者に自動的に相続権が発生しますが、事実婚では遺言がない限り法定相続人とはなりません。
法律婚が選ばれやすい理由
- 社会的信用の高さ
法律婚は「配偶者あり」として扱われ、就職やローン審査、家族手当などでも正式な婚姻関係と認識されます。事実婚では「内縁関係」と見なされ、会社や金融機関での取り扱いに差が出ることがあります。 - 戸籍制度の影響
日本では戸籍制度が家族の法的な基盤となっており、子どもの認知や姓の扱いにも法律婚は優位です。事実婚では子どもが「非嫡出子」となり、父親との法的関係を確立するには認知が必要です。 - 税制・保険・年金制度
配偶者控除や遺族年金などの制度は、基本的に法律婚の配偶者を対象に設計されています。事実婚では、一部の制度が利用できなかったり、審査に時間がかかることがあります。
相続対策としての遺言の限界
確かに遺言書を用いることで、事実婚のパートナーに遺産を残すことは可能です。しかし次のような課題があります。
- 遺留分請求のリスク:配偶者でない限り、他の法定相続人(子や親)から遺留分減殺請求を受ける可能性があります。
- 税制上の不利:法律婚の配偶者には相続税の大幅な控除があるのに対し、事実婚のパートナーには適用されません(基礎控除のみ)。
- 認知度の低さ:不動産登記や金融機関への提出時に、事実婚関係者が「他人」として扱われ、手続きが煩雑になります。
このように、遺言だけでは制度的なカバーに限界があるため、依然として法律婚の方が実務上は有利です。
事実婚を選ぶカップルの背景
それでも事実婚を選ぶ理由としては。
- 姓を変えたくない:日本では法律婚による夫婦別姓が認められていないため、特に女性が姓を変えることに抵抗を感じるケースが多く見られます。
- 自由なパートナーシップの実現:法制度に縛られず、対等でフラットな関係を望むカップルもいます。
- 再婚や過去の家庭状況:前婚の戸籍を維持したい場合など、事情があるケースもあります。
まとめ
事実婚にも遺言や契約による対応手段はありますが、相続や税制、社会的認知など、現行の制度では法律婚が圧倒的に有利です。だからこそ、多くの人が法律婚を選んでいるのです。事実婚の自由さも魅力ではありますが、その分リスク管理と法的備えがより重要になります。選択は自由ですが、それぞれのメリット・デメリットをしっかり理解した上で、自分たちに合った形を選びましょう。