借金を抱えたまま生活保護を受けることは決して珍しいことではありません。しかし、生活保護制度では借金の返済は原則認められていないため、債務整理や自己破産が一般的な選択肢として語られがちです。とはいえ、自宅を手放さずに生活保護を受けたい場合や、少額の借金で返済の見通しが立っている場合は、自己破産以外の方法を模索する価値があります。
生活保護制度と借金の原則的な関係
生活保護制度は、憲法25条に基づく「健康で文化的な最低限度の生活」を保障する制度であり、借金返済のために使うことは基本的にできません。支給される保護費は、あくまでも生活に必要な費用に充てるものであり、返済に利用した場合は不正受給とみなされる可能性もあります。
そのため、生活保護受給者が借金を抱えている場合には、通常、弁護士や司法書士を通じた債務整理(任意整理、自己破産など)を検討するのが一般的です。
自己破産しない選択肢はあるのか
借金の額が10万〜20万円程度と少額であり、生活保護からの脱却が数年以内に見込める場合、債権者と「返済猶予」の交渉を行うことが選択肢となる可能性があります。
このような交渉は「任意整理」の一種として扱われ、弁護士や認定司法書士に依頼することで、一時的に返済を停止し、生活保護脱却後に元金+利息で返済を再開する旨の合意を取り付けることも理論上は可能です。
ただし、これが実現するかどうかは相手(債権者)次第であり、法的な義務を課せられるものではないため、交渉に失敗することもあります。
実例:返済猶予の交渉に成功したケース
ある相談者は、消費者金融からの借金15万円があり、生活保護を受給することになりました。相談者は司法書士を通じて、収入回復まで返済を一時猶予してもらいたいと申し出ました。
結果的に、債権者側は「3年間の利息のみ加算で元本据え置き」という条件で合意。生活保護から脱却後、利息を含めた全額を一括で返済することで解決に至りました。
弁護士や自治体の無料相談を活用する
このような対応をするには、法律知識と交渉力が必要なため、必ず弁護士または司法書士への相談が前提となります。また、多くの自治体では生活保護受給者向けの無料法律相談を実施しており、法テラスを通じた支援も受けられます。
まとめ:自己破産以外の選択肢も状況次第で可能
借金の額が少額であり、生活保護から早期に脱却できる見込みがある場合には、自己破産以外にも交渉による返済猶予という選択肢が存在します。ただし、法的手続きや交渉には専門知識が不可欠なため、まずは専門家に相談することが重要です。生活保護を受けながらも自立を目指す方にとって、柔軟な債務対応が可能であることを知っておくことは、大きな一歩となるでしょう。