成年後見制度は、高齢者や障がい者など判断能力が不十分な方々の権利を守るために設けられた仕組みです。しかし、後見人自身が高齢で病気やケガによって職務が果たせなくなることもあります。そうした場合に制度はどう対応するのか、この記事で詳しく解説します。
成年後見制度の基本的な仕組み
成年後見制度には家庭裁判所が関与しており、後見人は裁判所の選任を受けて就任します。主な役割は、財産管理や契約手続き、施設とのやり取りなど、本人の利益を守ることにあります。
原則として、後見人は1人で選任されますが、必要に応じて複数名を指名することも可能です。この場合、それぞれの後見人に分担された役割が与えられることもあります。
後見人が対応できない場合の対応策
後見人が病気や高齢で職務継続が困難になった場合、家庭裁判所へ「辞任の申し立て」や「変更の申し立て」を行うことが可能です。裁判所が必要と判断すれば、新たな後見人が選任されます。
また、緊急性がある場合には、親族や施設職員などが家庭裁判所に対して早急な後見人選任の申立てを行うことで、空白期間を最小限に抑える工夫もされています。
複数後見人、副後見人という選択肢
実際の制度では「副後見人」や「補助人」といった制度上の立場はありませんが、「共同後見人」や「後見監督人」という形で複数人がかかわるケースがあります。共同後見人は、互いに補完し合う形で業務を行うため、一人に不測の事態があった場合でも、もう一人が対応可能です。
また、後見監督人は後見人の行動をチェックする立場ですが、状況によっては監督人が家庭裁判所に代替措置を促すこともできます。
現場での実例：後見人が入院したケース
ある自治体では、後見人である高齢の父親が急病で入院し、娘の後見が一時的に中断される事態が発生しました。このとき家庭裁判所は速やかに後見人の変更を認め、新たに司法書士が後見人に選任されました。
こうしたケースは珍しくなく、後見人の交代や追加は制度上しっかりと整備されているため、被後見人の生活や権利が守られなくなることはありません。
事前にできる対策：将来を見据えた申し立て
高齢者が後見人に選任される際には、将来的なリスクを見越して共同後見人の申立てを検討することも重要です。専門職（司法書士・社会福祉士等）とペアで後見を行うことで、継続的かつ安定した支援が可能になります。
また、後見監督人の選任を初めから申請しておくことで、後見人が体調を崩したときにスムーズな引き継ぎが行える環境を整えることができます。
まとめ：後見人が機能しない事態にも備えた制度設計がある
成年後見制度は、後見人が病気や入院などで対応できなくなる事態も想定して設計されています。家庭裁判所への申し立てを通じて後見人の交代や追加が行えるため、被後見人が孤立する心配は基本的にありません。
不安な場合は、司法書士や社会福祉士など専門職へ事前に相談することで、より安心して制度を活用することができるでしょう。