近年、SNSの匿名アカウント(通称「捨て垢」)を使って特定の人物を探る行為が増えています。しかし、使い方によってはトラブルや法的リスクに巻き込まれる可能性もあります。今回は、特定目的で作った捨て垢を使って鍵垢ユーザーをフォローした際に「開示します」と警告を受けた場合、実際にどのようなリスクがあるのかを解説します。
SNSで「開示請求します」とはどういう意味か
「開示請求」とは、ネット上の匿名アカウントに対して、投稿者の個人情報(IPアドレス、氏名、住所など)を明らかにするための法的手続きのことです。これは「発信者情報開示請求」と呼ばれ、プロバイダ責任制限法に基づいて行われます。
ただし、これはあくまで法的手続きであり、誰でも簡単にできるものではなく、裁判所の判断が必要です。単に鍵垢をフォローしただけでは、この手続きが認められる可能性は極めて低いと考えられます。
どんな場合に発信者情報が開示されるのか
発信者情報開示が認められるには、投稿や行為が違法性を帯びていることが要件です。たとえば、以下のような場合に開示が認められる可能性があります。
- 名誉毀損(具体的な虚偽情報の流布)
- 侮辱(抽象的な悪口でも継続的・公然と行われる場合)
- プライバシー侵害(住所、写真などの無断投稿)
- ストーカーやつきまとい行為に該当する場合
単に「フォローしただけ」や「様子を見るために鍵垢を見に行った」程度では、上記に該当することは通常ありません。
「不利になる」可能性があるケースとは?
法律上、不利になるのは違法性が認められる行為をしていた場合です。以下のような場合は注意が必要です。
- 複数回にわたる嫌がらせDM送信
- フォローと解除を繰り返す迷惑行為
- 相手の不安を煽るようなストーカー的行動
こうした行為は、プラットフォームによっては規約違反となり、アカウント凍結や警告を受けることもあります。
仮に法的措置に発展してもすぐに「開示」されるわけではない
発信者情報開示請求が認められるまでには、次のようなステップが必要です。
- 対象者の違法性のある投稿の証拠を集める
- プロバイダに対し開示請求を行う
- 仮処分または訴訟で裁判所の判断を得る
- プロバイダが開示する
このプロセスには数ヶ月〜1年以上かかることもありますし、費用や手間もかかるため、安易な脅し文句として「開示します」と送られてくるケースも多いです。
本当にリスクを避けたいならどうすべきか
たとえ違法性がなかったとしても、トラブルになった時点で精神的な負担を強いられるのは間違いありません。SNS上での調査や観察行動は、以下のようなルールを守ることでトラブルを回避できます。
- 目的外のフォローやDMは避ける
- 捨て垢でも、相手の不安を煽る行動は慎む
- 匿名でも他人の権利を侵害しない
- 不安を感じたら行動をやめ、記録を残す
まとめ
今回のように、彼氏の浮気相手を探すために捨て垢を使いフォローした行為自体は、違法とは言えません。ただし、相手が不安を感じるような行動を繰り返した場合には、民事トラブルやプラットフォームからの制裁を受ける可能性はあります。「開示します」というメッセージが届いたとしても、実際に開示が認められるのは限定的です。万が一トラブルに発展しそうな場合は、弁護士など専門家に早めに相談することをおすすめします。