インターネット上の掲示板やSNSでの発言が、思わぬ法的リスクを招くことがあります。特に、感情的な投稿が侮辱罪や名誉毀損罪に該当する可能性があり、発信者情報の開示請求を受けることもあります。今回は、ネット上での発言がどのような場合に法的責任を問われるのか、具体的な事例を交えて解説します。
侮辱罪とは何か?
侮辱罪は、刑法第231条に規定されており、「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者」が該当します。ここでいう「公然」とは、不特定または多数の人が認識できる状態を指し、インターネット上の掲示板やSNSでの投稿はこれに該当します。
例えば、「バカ」「クズ」「死ね」などの抽象的な悪口でも、公共の場で発言すれば侮辱罪に問われる可能性があります。2022年の法改正により、侮辱罪の罰則は厳罰化され、1年以下の懲役または禁錮、30万円以下の罰金が科されることになりました。
名誉毀損罪との違い
名誉毀損罪は、刑法第230条に規定され、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者」が該当します。ここでいう「事実の摘示」とは、具体的な事実を示すことを意味し、例えば「○○は犯罪者だ」といった発言が該当します。
一方で、侮辱罪は事実の摘示がなくても成立するため、感情的な悪口や抽象的な表現でも罪に問われる可能性があります。
発信者情報開示請求とは?
インターネット上での誹謗中傷や侮辱的な発言に対して、被害者は発信者情報開示請求を行うことができます。これは、投稿者のIPアドレスや氏名、住所などの情報を開示させる手続きで、裁判所の判断により開示が認められることがあります。
開示請求が認められるためには、発言が違法であることが明らかである必要があります。例えば、侮辱罪や名誉毀損罪に該当する発言であることが求められます。
具体的な事例:掲示板での発言が侮辱罪に該当したケース
ある掲示板で、特定のユーザーに対して「お前は十分終わってる」と投稿したケースがありました。この発言は、具体的な事実の摘示はないものの、相手を侮辱する意図が明確であり、公然とされたものであるため、侮辱罪に該当する可能性があります。
このような発言に対して、被害者が発信者情報開示請求を行い、投稿者が特定されるケースもあります。特定された場合、民事上の損害賠償請求や刑事告訴を受けるリスクがあります。
法的リスクを避けるための注意点
インターネット上での発言は、多くの人に影響を与える可能性があるため、以下の点に注意することが重要です。
- 感情的な投稿は控える:一時的な感情での発言が法的リスクを招くことがあります。
- 具体的な事実の摘示は慎重に:事実であっても、公然と他人の名誉を毀損する発言は名誉毀損罪に該当する可能性があります。
- 匿名性に頼らない:インターネット上の匿名性は完全ではなく、発信者情報開示請求により特定されることがあります。
まとめ
インターネット上での発言が侮辱罪や名誉毀損罪に該当する可能性があり、発信者情報開示請求を受けるリスクがあります。感情的な投稿や他人を傷つける発言は控え、法的リスクを避けるよう心がけましょう。万が一、トラブルに巻き込まれた場合は、速やかに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。