生活保護を受給している親から、土地を生前贈与として譲り受けたいというケースは珍しくありません。しかし、この手続きには法律や制度上の制約があるため、事前の知識が必要です。この記事では、生活保護と贈与の関係性や、実際に生前贈与を行う際の注意点について詳しく解説します。
生活保護受給者の資産と贈与の基本ルール
生活保護制度では、原則として「保有資産は生活に充てるべきもの」とされています。土地や不動産などの資産がある場合、その活用または売却が求められることがあります。従って、生活保護受給者が土地を所有している時点で、自治体によっては受給の要件に該当しない可能性があるのです。
加えて、生活保護受給中の贈与は、資産の処分とみなされ、保護打ち切りの対象となることがあります。特に贈与が第三者の利益（たとえば子ども）を目的とした場合、「扶養義務者への優遇」として問題視されやすいです。
生前贈与の申請や登記はできるのか？
技術的には、生活保護を受けていても土地の名義変更や贈与登記は可能です。ただし、自治体の福祉事務所への無断贈与は重大な違反とされ、発覚した場合には受給打ち切りや返還請求の可能性もあります。
また、贈与税の対象にもなります。贈与を受ける側が受け取る財産の評価額によっては、110万円を超えた部分に対して贈与税が課税されるため、金銭的負担も生じることになります。
生活保護制度と扶養義務者の関係
生活保護の運用では、親族間の扶養義務が前提とされています。子どもが土地を受け取るという行為は、「扶養よりも先に利益を得た」と判断されやすく、福祉事務所から扶養を強く求められることになります。
場合によっては、「その土地を売却して得た資金で親を扶養できるのではないか」といった指摘がなされることもあり、贈与後の生活設計にも大きく関わる問題です。
専門家に相談するべき理由
このように、生活保護と生前贈与には制度上の衝突が多くあります。そのため、社会福祉士や行政書士、税理士などの専門家への相談は不可欠です。福祉事務所と円滑に連携しながら、法的・制度的なトラブルを回避する道を模索しましょう。
たとえば、土地を将来的に相続することを前提に、今すぐの贈与ではなく「遺言書での指定」を活用する方法など、代替的な選択肢も含めたアドバイスが得られます。
まとめ：贈与の可否は制度と状況次第。慎重な判断が重要
生活保護受給中の親から土地を生前贈与されることは原則として困難です。制度上の制限が多く、トラブルの原因にもなりかねません。まずは福祉事務所に相談の上、専門家のアドバイスを受けて慎重に判断しましょう。
親子双方にとって最も良い形で財産を引き継ぐには、合法的かつ制度に即した方法を選択することが何より大切です。