高齢者の送迎中に発生した事故において、介護事業所の不適切な対応や行政の消極的な姿勢が問題となることがあります。特に重大な怪我を負ったにもかかわらず、事故報告の遅延や責任回避の対応が見られる場合、家族としては不信感と不安を抱くのは当然です。本記事では、送迎中の事故が発生した場合に確認すべき対応、事業所と行政の責任範囲、そして家族ができる行動について解説します。
送迎中の事故は誰の責任か?
介護保険法に基づく通所介護(デイサービス)では、送迎もサービス提供の一環とされます。送迎中に発生した事故については、原則として事業所が責任を負うべきとされています。特に、事故発生後に適切な救護措置や家族への連絡を行わなかった場合、重大な管理責任の欠如が問われます。
また、本人が転倒後に明らかな症状を見せていたにもかかわらず、放置したことが立証されれば、損害賠償の対象となる可能性も高くなります。
事故報告書が提出されない・内容が異なる場合の対応
介護事業所には、事故発生後に迅速かつ正確な事故報告書の作成・提出が義務付けられています。報告書が未提出または虚偽・矛盾がある場合、市区町村の介護保険課などへの相談が必要です。
対応のポイントは以下の通りです。
- 文書で記録を残す:事業所とのやり取りは必ず書面で残しましょう。
- 第三者(弁護士・介護相談員など)に相談:外部の専門家に介入してもらうことで、公平な調査が進みます。
- 行政監査の請求:地域包括支援センターを通じて、実地指導や抜き打ち監査の申し出が可能です。
相談員が機能していない場合の対応策
相談員の設置は利用者保護のための制度ですが、配置されていない・機能していないケースもあります。その場合、市区町村の高齢福祉課や福祉監査室に連絡し、制度上の不備を訴えることができます。
さらに、介護保険法に基づいて指定された第三者評価機関に申し立てを行うことも、事業所への改善圧力となります。
保険対応と賠償の違いを理解する
介護事業所が加入している損害賠償保険では、医療費の一部しか賄えないことがあります。しかし、保険で賄えない部分は事業所が直接賠償する義務があることが明示されている場合、事業所はその責任を回避できません。
この点を明記した事故報告書や録音記録などがある場合、それは法的にも有効な証拠になります。
交渉が難航する場合には、消費生活センターや弁護士会の無料相談窓口を活用し、内容証明郵便で請求する方法も有効です。
行政の対応が消極的な場合の打開策
「書類がそろっていれば問題ない」という行政の対応は、制度的には正しい一面がある一方、利用者保護の観点からは不十分です。このような場合には以下の方法が考えられます。
- 市議会・県議会への陳情:事故の重大性と制度の不備を訴える
- 新聞やテレビなどメディアへの情報提供:広く世論の関心を引くことで行政の動きを促進
- 監査請求の申し立て:地方自治法に基づき、行政処分の是非を監査委員に問う手続き
公的機関は「訴え続ける」ことでしか動かない場合もあるため、粘り強い行動が求められます。
まとめ
デイサービスの送迎中に起きた重大事故と、その後の対応を巡る問題は、介護制度全体の課題を映し出しています。家族としては、事故の詳細を記録に残し、第三者機関・行政・法律家と連携しながら、正当な補償と責任追及を進めることが重要です。制度や対応に疑問がある場合は、声を上げ続けることで、改善の糸口が開けるかもしれません。