職場や家族、周囲の人間関係において「事実とは異なることを吹聴されている」と感じたとき、それが法的にどのような問題となるのか知っておくことは、自分を守る上で非常に重要です。この記事では、名誉毀損罪や侮辱罪が成立するケースとその違い、実際に被害にあったときの対応方法について解説します。
名誉毀損罪とは?刑法上の定義を確認
名誉毀損罪は、刑法第230条に規定されており、「公然と事実を摘示し、人の社会的評価を低下させる行為」に対して成立します。
ここでのポイントは次の通りです。
- 事実の有無を問わず成立する可能性がある(ただし、公益性・公共性・真実性の3要件を満たせば免責される)
- 「公然」とは、不特定または多数の人が認識できる状態
- 対象の社会的信用・評価を傷つけることが要件
たとえば、「あの人は過去に窃盗をしたことがある」と根拠もなく職場で話した場合、事実であっても名誉毀損罪に該当する可能性があります。
侮辱罪とは?名誉毀損との違い
一方、侮辱罪(刑法第231条)は、事実を示すことなく人を侮辱する行為に対して適用されます。たとえば、「あいつは頭がおかしい」や「どうしようもないやつだ」といった、具体的な根拠を示さずに悪口を言う行為が該当します。
名誉毀損と異なり、事実を摘示しないため、真偽の確認が必要ない点が大きな違いです。罰則は名誉毀損と比べて軽めで、「拘留または科料」が定められています。
吹聴や噂話が法的トラブルになる具体例
以下のようなケースでは、法的責任が問われる可能性があります。
- 「○○さんは不倫しているらしいよ」と上司や同僚に言いふらす
- 「あの人は精神的におかしい」と家庭内や近所で根拠なく広める
- LINEやSNSで虚偽の悪評をばらまく
これらの行為は、名誉毀損・侮辱罪の成立だけでなく、民事上の損害賠償請求の対象となることもあります。
被害を受けたと感じた場合の対処法
実際に「事実無根のことを言われている」と感じたときは、以下の手順を踏むとよいでしょう。
- 証拠を残す:会話の録音、LINEのスクリーンショット、SNS投稿など
- 事実確認:まずは第三者や当事者に冷静に事実を問い直す
- 弁護士相談:感情的にならず、専門家に相談して対応方針を練る
- 場合により被害届や民事訴訟の検討:特に名誉が著しく傷つけられた場合
加害者が身内であっても、法的措置は可能です。家庭内の問題であっても、警察や弁護士への相談は躊躇せず行いましょう。
まとめ
事実とは異なることを吹聴された場合、それが名誉毀損罪や侮辱罪に該当することがあります。特に職場や家庭内での発言であっても、社会的評価が下がる内容であれば、法的責任を問うことができます。自分の名誉を守るためにも、証拠を確保し、冷静に法的対応を検討する姿勢が重要です。