交通事故の加害者・被害者となった場合、相手の通院状況や診断内容が気になることはよくあります。とくに「軽い接触事故」や「初期検査で異常なし」のような状況で、相手が長期通院していると、「本当に必要な治療なのか?」と疑問に思うこともあるでしょう。しかし、保険会社に確認しても「個人情報のためお答えできません」と断られることがあります。本記事では、その理由と仕組みを法律と保険業務の観点から解説します。
保険会社が相手の通院内容を教えない理由とは?
保険会社が加害者に対して被害者の治療状況を明かさないのは、個人情報保護法に基づいた対応です。診断名・治療内容・通院先といった医療情報は「要配慮個人情報」に該当し、原則として第三者に開示することはできません。
保険会社は、あくまで「被害者側の代理」として損害賠償や治療費の支払いを代行している立場であり、「加害者=契約者」に対しても、被害者のプライバシーを保護する義務を負っています。
どこまでの情報なら教えてもらえるのか
一切の情報が教えてもらえないわけではありません。保険会社によっては、治療の進捗状況や通院期間などの「概略」について、開示可能な範囲で説明することもあります。
たとえば、「まだ通院中です」「週1回の通院が続いています」といった程度の情報は伝えられる場合がありますが、「どこの病院で」「何の診断名で」治療しているかといった詳細までは開示されないのが一般的です。
軽微な事故でも長期通院が認められるケース
外見上の異常がない場合でも、「むち打ち症」や「神経症状」のように、画像診断では確認しにくい症状が存在します。こうした症状に対しては医師が必要と判断すれば、治療やリハビリが長期に及ぶことがあります。
さらに、被害者側が弁護士に相談し、治療継続を強く主張している場合、保険会社は治療費の打ち切りを判断しづらくなり、通院が長期化する傾向があります。
被害者側の通院に疑問がある場合の対応方法
もしも「不自然な通院が続いているのでは?」と感じた場合、以下のような方法で保険会社に対応を促すことができます。
- 治療状況の確認依頼:契約者として保険会社に対して、現時点での支払状況や治療期間の確認を申し出る
- 意見書の提出:自身の主張をまとめた意見書を保険会社に提出し、過剰請求の懸念があることを伝える
- 弁護士への相談:高額な賠償が想定される場合や示談交渉に不安がある場合、弁護士を通じて開示請求や対応を進める
ただし、これらを行っても、医療情報の「中身」までは開示されない点には注意が必要です。
通院の長さ=慰謝料の多さにはならないケースも
通院期間が長いほど慰謝料が増えるのでは?と考える方も多いですが、保険会社や裁判所は「通院実態」を重視します。週1回程度の通院を半年続けた場合と、週3〜4回の集中通院を3ヶ月続けた場合とでは、後者の方が「治療が必要だった」と評価されることもあります。
慰謝料の算定には「通院日数」や「治療頻度」「治療の必要性」が反映されるため、単純に通院期間が長ければ有利というわけではありません。
まとめ
交通事故の相手方が長期間通院している場合でも、保険会社がその詳細を加害者に教えないのは、個人情報保護の観点から当然の対応です。治療の進捗状況や支払い状況など、開示可能な範囲での説明を求めつつ、過剰通院の疑念がある場合には、書面での申し出や専門家への相談も選択肢となります。疑問を感じたときこそ、冷静かつ合法的な対応を心がけましょう。