街中で警察官から職務質問を受けるケースは、急いでいるときや時間がないときには特にストレスに感じるものです。「任意だから無視できる」と思いがちですが、対応を間違えると大きなトラブルに発展することも。今回は、職務質問の法的な位置づけと、警察官とのトラブルを避けるために知っておくべき基本を解説します。
職務質問は「任意」だが無視して良いわけではない
警察官による職務質問(いわゆる「職質」)は、警察官職務執行法第2条に基づく任意の措置です。これはつまり「拒否する自由」もあるということですが、拒否=何もされないという意味ではありません。
例えば、「急いでいるので行きます」と立ち去ること自体は違法ではありませんが、警察官が不審だと感じた場合、進行を遮るような行動をとる可能性があります。特に周囲の状況や言動によっては、「逃走の可能性がある」と判断されやすくなります。
掴まれたら違法?任意と強制の境界線
任意の職務質問であるにもかかわらず、警察官が腕を掴んだり体を押さえたりすることは本来認められていません。これは違法な「実力行使」に該当するおそれがあり、過去の判例でも警察官側の行動が問題視された事例があります。
しかし、警察官が「逃走のおそれ」「犯罪の可能性が高い」と合理的に判断した場合、制止のために一時的に体に触れることが「やむを得ない措置」として許容されることがあります。ここが非常にグレーな領域です。
その場で振り払うと公務執行妨害?
警察官に掴まれた際に「離してください!」と体を振りほどいた行為が、公務執行妨害罪(刑法第95条)に問われるかどうかは、状況によって判断が分かれます。
単に振りほどいた程度であれば、違法性は認められにくい傾向にありますが、強く押し返したり、暴力的に抵抗した場合は「公務を妨害した」と判断され、現行犯逮捕される可能性があります。
実際に、「不当な職質への抗議で体を振り払っただけで逮捕された」と主張する事例もありますが、多くは警察官側が「暴行を受けた」と主張していたという点に注意が必要です。
実例:トラブルを回避するための対応例
以下のような対応を心がけることで、無用なトラブルを避けることが可能です。
- 「急いでいる」と丁寧に伝えた上で、身分証を見せて対応を簡略化
- 録音・録画アプリをオンにして、会話を記録する(合法)
- 無理に逃げようとせず、対応を簡潔に終わらせる
たとえば、「急いでいて時間がないのですが、身分証を見せますのでご確認ください」と伝えることで、警察官も安心し、早く開放されることが多いです。
万が一のために知っておきたい権利
職質を受けた際の対応として、自分の権利を主張することも重要です。
- 任意であることを確認する:「これは任意ですか?」と確認する
- 職務執行法に基づいた説明を求める:「何を根拠に職務質問しているのですか?」
- 身分証明の提示を求める:警察官は職務中、身分証を提示する義務があります
これらは法律で認められた行為であり、冷静に行えばトラブルを防ぎながら自己防衛につながります。
まとめ:職質は冷静に、強制力との境界を理解しよう
職務質問は原則「任意」ですが、状況次第では実質的に強制力を伴うケースもあります。掴まれた際に抵抗すると、公務執行妨害に問われるリスクもゼロではありません。大切なのは、冷静に対処し、自分の立場を正確に伝えることです。
もし違法な対応を受けたと感じた場合は、その場で争わず、後から法的な救済手段を取るのが望ましい対応です。知識を持つことで、自分の身を守ることができます。