宅建試験対策:債務不履行と契約解除の基本と『同時履行の抗弁権』の理解を深める

宅建試験で頻出の「債務不履行」と「契約解除」の論点は、特に初学者にとって混乱しやすい部分です。中でも「同時履行の抗弁権」が絡むケースは理解が難しく、問題文と民法の条文との対応をしっかり理解することが必要です。この記事では具体的な事例をもとに、同時履行の抗弁権の仕組みと解除の可否について解説します。

同時履行の抗弁権とは?

同時履行の抗弁権とは、「自分が履行しない限り、相手にも履行を求められない」という権利です。売買契約においては、買主が代金を支払わなければ、売主は所有権移転登記や引渡しを拒むことができます。この関係は民法533条に基づきます。

したがって、売主が履行しないことに対して買主が解除を主張するには、まず買主自身が残代金の支払いを提供する必要があります。これを「履行の提供」といいます。

問題文の状況を読み解く

この問題では、A(買主)は3000万円を支払い、残金5000万円は3カ月後に登記と引換えで支払う約定となっています。履行期が到来したのにB(売主)が登記・引渡しをしないという状況です。

このようなケースで、買主が「履行の提供(残金5000万円を支払う意思表示と準備)」をせずに「催告だけ」したとしても、契約を解除することはできません。売主も「登記と引渡しは代金支払いと同時」という主張ができるため、抗弁権があるからです。

なぜ解除には履行の提供が必要なのか?

買主が一方的に解除するためには、「自分の義務(ここでは代金の支払い)」を履行しようとしたか、履行の準備ができていることを示す必要があります。これにより「私は支払う準備があります。それなのに売主が履行しない」という立場が確保され、初めて解除が可能になります。

仮にこの準備がなければ、「あなただって払ってないじゃないか」という売主の主張に正当性が生まれ、買主が解除を主張する正当性を欠いてしまうのです。

解除後にお金はどうなるの?

「解除するには先に支払わないといけない?支払ったお金は返ってくるの?」という疑問もありますが、これは正当な解除であれば「原状回復義務」により返還されます。つまり、解除後は契約はなかったことになり、支払済みの代金は返金対象となります。

ただし、履行の提供は「実際の支払い」ではなく、「支払う用意があることを表明する(例えば、銀行残高を示す、準備済みの旨を伝える)」という形で足りる場合も多いため、必ずしも現金をその場で支払う必要はありません。

催告期間がないと解除できない?

催告による解除の原則は、民法541条に基づきます。「相当期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がなければ解除できる」という規定です。したがって、問題の選択肢に「期間内に履行がなければ」という要素がなかったとしても、それが理由で×というのは根拠が弱いです。

この問題の本質は「履行の提供がない限り、解除は認められない」という点にあります。催告の有無ではなく、同時履行関係にある契約では買主が自らの義務を果たす準備をしていないと、解除できないのです。

まとめ:解除の前にまず履行の提供が鍵

宅建試験において、契約解除や債務不履行の問題では、「同時履行の抗弁権」の存在とその効果を理解することが重要です。今回の事例では、買主が解除したいのであれば、まず残代金の支払い意思と準備があることを示さなければなりません。

単なる催告だけでは解除できないというのは、この「同時履行の抗弁権」の理解がカギになります。復習の際は、民法533条と541条の違いを整理しつつ、類題で繰り返しトレーニングしていくとよいでしょう。

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