認知症の家族と同居している場合、その後の施設入居や他界後の不動産の扱いについて不安を抱える方は少なくありません。特に、家や土地が祖父名義である場合、将来的にその住居に住み続けられるか、相続や贈与が可能かどうかは慎重に確認する必要があります。本記事では、そのような悩みを抱える方に向けて、法的な視点と現実的な対策を解説します。
認知症の祖父が施設に入居した後の居住権について
祖父が老人ホームなどに入所した後でも、法的には祖父が所有者である以上、第三者(孫家族)がその家に住み続けることは「黙認されている使用」状態となります。これは法的な使用貸借にあたる可能性が高く、祖父の生前中で、明確な反対がなければ住み続けることは基本的に問題ありません。
ただし、後見人が付いた場合には、後見人の判断によっては使用許可を打ち切られる可能性もあるため、注意が必要です。また、後見制度利用時には居住継続の意向を伝え、可能であれば書面などで記録を残しておくと安心です。
祖父の死後に家を相続または取得できるか
祖父の他界後、孫であるあなたが家や土地を相続または取得するには、基本的に遺言書が必要です。しかし、既に認知症が進行している場合、意思能力の欠如により新たな遺言書は無効とされる可能性が高く、法定相続人である子(叔母や母)に相続権が移ります。
このような場合、孫が相続するには以下のような手段が考えられます:
- 相続人全員による遺産分割協議で家をあなたに取得させる合意を得る
- 祖父が生前に贈与していた証明(贈与契約書など)があれば有効
- 養子縁組が可能な時期に行われていれば、法定相続人となる
生前対策ができなかった場合のリスクと対応策
認知症発症後は、法的な意思表示(遺言、贈与、養子縁組など)が認められにくいため、事後対応が難しくなります。こうしたケースでは、家族間の話し合いとともに、法定相続人全員からの承諾書や住み続けることの合意文書などを準備しておくことが現実的な対策となります。
また、弁護士や司法書士に相談し、将来的な不動産の扱いについて書面化しておくと、争いのリスクを大きく減らすことができます。
法定相続と孫の立場
法定相続において孫は基本的に相続人ではありません。ただし、被相続人(祖父)の子(例えば母)が先に亡くなっていた場合には「代襲相続」により孫が相続人になります。しかし、今回のケースでは祖父の子(叔母と母)が健在のため、代襲相続は適用されません。
そのため、あなたが不動産を取得するには、相続人全員の同意を得て「遺産分割協議書」に署名捺印してもらう必要があります。
まとめ:家族の合意と法的備えが鍵
祖父の家に住み続けられるか、また将来的にその家を取得できるかは、家族間の合意と法的手続きをどう進めるかに大きく左右されます。すでに認知症が進行している場合は、新たな法的意思表示ができないため、相続人との話し合いや合意形成が重要です。
可能であれば専門家に相談し、今できる準備(合意書の作成、後見制度の利用など)を進めておくことで、後々のトラブル回避につながります。