会社法を学ぶ中で、株式の譲渡後に名義書換をしないまま譲渡人が死亡したケースについて、誰がどのように名義書換を請求できるのかという疑問に直面することがあります。特に譲渡制限がない株式の場合、譲受人の請求権とその根拠条文について正確に理解することが重要です。
譲渡制限がない株式と名義書換の基本
譲渡制限がない株式とは、会社の承認なしに自由に譲渡できる株式のことです。この場合、譲渡自体には制限がないため、譲渡契約が成立すれば所有権は譲受人に移ります。しかし、会社にとっては、株主名簿に記載された名義人こそが株主としての権利を行使できる存在です。そのため、譲受人が実際に株主として扱われるには名義書換が必要です。
会社法133条の解釈と適用
会社法第133条第1項は、「株券を発行していない株式会社において、株式を譲渡した者は、その譲渡によって株主となった者と共同して、名義書換を請求することができる」と規定しています。これは、原則として譲受人と譲渡人が共同で請求すべきであることを意味します。
しかし譲渡人が死亡している場合、共同請求は不可能です。この場合に備え、133条2項では、「正当な理由があるときは、譲受人は、単独で名義書換を請求することができる」と定めています。譲渡人の死亡はこの「正当な理由」に該当すると一般に解釈されています。
会社法施行規則第22条との関係
会社法施行規則第22条は、株主が名義書換を請求する際に必要な書面等を規定するもので、会社法133条の手続に準じた書類の整備を補完しています。施行規則22条は、名義書換の請求者が譲受人である場合にも適用されるとされ、会社が請求内容の真実性を確認するために必要な書類(譲渡契約書の写しや相続人の同意書など)を提出することが求められます。
譲受人が単独で名義書換を請求できるか
譲渡人が死亡したという事実が「正当な理由」に該当するため、譲受人は原則として単独で名義書換の請求が可能です。この場合でも、会社は譲渡が事実であることを確認する書面の提出を求めることがあり、請求書類には慎重さが求められます。譲受人が遺族からの協力を得て、譲渡の事実関係や遺産分割の状況を説明できる書類を添えることが一般的です。
実務での対応例
例えば、AさんがBさんに譲渡した株式の名義書換前にAさんが死亡した場合、Bさんは以下の書類を準備して名義書換を請求することが多いです。
- 株式譲渡契約書の写し
- Aさんの死亡届または戸籍謄本
- 相続人の同意書(または相続関係説明図)
これにより会社は、譲渡が有効であり、譲渡人が死亡したことによって共同請求が不可能であることを確認できます。
まとめ
譲渡制限のない株式において、譲渡後に名義書換がなされずに譲渡人が死亡した場合、譲受人は会社法133条2項の「正当な理由」に基づき、単独で名義書換を請求できます。会社法施行規則22条もこれを補完する形で適用され、適切な書面の提出が求められます。会社法の条文とその趣旨を理解し、正しい手続を踏むことが重要です。