教科書のQRコード教材を他校採用外で使うのは違法?教育現場で気をつけたい著作権の基本

教育現場でICT活用が進む中、教科書に付属するQRコードやデジタル教材を活用する機会も増えています。しかし、こうしたデジタル教材の扱いには著作権が密接に関わっており、無意識に違法利用に該当する可能性もあります。特に他社の教科書を自費で購入し、そのQRコード教材を使用する場合には注意が必要です。

教科書と著作権:基本的な考え方

教科書の本文や掲載作品、付属する音声や動画教材などはすべて著作権の保護対象です。著作権は出版社や原作者、制作会社などに帰属しており、たとえ教材が教育目的であっても、無断使用は原則として許されていません。

文部科学省が許可した教科書であっても、内容の複製や配布、共有には各社が定めた利用条件があるため、それに準拠する必要があります。

QRコード教材の利用規約を確認しよう

QRコードによってアクセスできるデジタル教材は、多くの場合、採用校または生徒のみを対象とした限定的利用が前提とされています。教員が個人で教科書を購入した場合、そのQRコードを用いた教材利用が許されるかどうかは、各出版社の規約により異なります。

例えば三省堂や光村図書などの出版社では「採用校における正規使用者のみが利用できる」と明記されているケースが多いため、別の学校での使用はNGとなることがあります。

自腹購入でもアウト?実例と判断ポイント

実際に「他社教科書を私費で購入し、自校の授業で使用したい」と考える教員は珍しくありません。たとえば、三省堂の国語教科書のQRコード教材を、光村図書を採用している学校の授業で使うことを検討する場面です。

この場合、「教材の提供対象が三省堂を採用している学校」に限定されているならば、利用は著作権違反に該当する可能性が高いといえます。仮に配布元のサーバーにアクセスできたとしても、それが“利用許諾を受けたユーザー”でなければ違法利用と見なされます。

著作権法第35条「授業目的公衆送信補償金制度」は使える?

2021年の著作権法改正により、教育機関では授業目的に限り、一定の補償金を支払うことで著作物の利用ができる「授業目的公衆送信補償金制度」が導入されました。しかしこの制度には以下の制約があります。

  • 利用対象は著作物に限る(QRコード教材は対象外のことも)
  • 教材提供者が制度に参加している必要がある
  • 営利目的では利用できない

つまり、すべてのQRコード教材がこの制度の下で自由に利用できるわけではありません。あくまで制度に参加している教材に限られます。

どうすれば合法的に活用できるか

最も確実な方法は、該当する出版社に利用許諾を確認することです。特に授業内で使う場合は、メールや公式フォームを通じて「このようなケースで使用可能か」を問い合わせることで、リスクを回避できます。

また、学内で使用する資料であれば、著作物の一部を引用の形で紹介し、出典を明記したうえでの活用も一案です。教育目的であっても著作権の基本を踏まえた対応が求められます。

まとめ:教育現場だからこそ守るべき著作権

教科書のQRコード教材を他社教科書採用校で利用する場合、たとえ個人購入であっても著作権上の制限を受ける可能性があります。教材の正当な利用は教育の信頼性を守るうえでも重要です。必ず出版社の利用規約を確認し、必要に応じて許可を得るようにしましょう。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

上部へスクロール