離婚の際に問題となるのが、結婚生活中に夫婦どちらかが児童手当を適切に管理していなかったケースです。とくに、夫が児童手当を生活費と称しながら趣味や娯楽に使っていた場合、返還請求ができるのか気になる方も多いでしょう。本記事では、児童手当の性質と法的な請求の可能性について詳しく解説します。
児童手当は誰のためのお金?法律上の位置づけ
児童手当は、児童手当法に基づいて支給されるもので、子どもを養育している保護者に対して支給されますが、その使途はあくまで子どものためというのが基本です。
実際には、日常的な生活費(食費・衣類・学用品など)に含まれて使用されることが一般的ですが、趣味の品や明らかに子どもに無関係な支出は本来の趣旨から逸脱しているといえます。
生活費の一部として使用していた場合の扱い
婚姻期間中の家計の中で、児童手当が生活費に組み込まれていた場合、それだけを取り出して「返せ」と主張するのは原則として困難です。というのも、夫婦は互いに扶養義務があり、家計の管理は共同責任とされるからです。
ただし、児童手当の一部または全額が明らかに不適切な使い方をされていたと立証できる場合は、請求の余地も考えられます。
私的な目的で使われていた場合の法的主張
仮に児童手当が趣味の品などに流用されていたとしたら、以下のような主張が検討されます。
- 不当利得返還請求:本来子どものために使うべき金銭を夫が私的に得た利益とみなし、その返還を求める。
- 財産分与の調整:離婚時の財産分与の際に、夫による一方的な使途を考慮して取り分を調整する。
- 損害賠償請求(信義則違反):著しく不誠実な金銭管理で精神的苦痛を被ったとして損害賠償を請求する例も。
ただし、いずれの主張も実現には証拠が必要であり、明細や口座記録、LINEのメッセージ履歴などが役立ちます。
証拠がない場合はどうなる?
ご質問のように「レシートなどの証拠がない」場合、請求は難しくなります。裁判においては立証責任があるため、現実的には請求が通らない可能性が高いです。
しかし、家計簿の記録や家族の証言、SNSでの投稿など、間接的でも信憑性のある情報を集めることで、請求の根拠を構築することは可能です。
現実的な対応策と今後のためのアドバイス
現実的には、以下のような対応が考えられます。
- 家庭裁判所での調停の場で主張する(財産分与の再検討など)
- 弁護士を通じて内容証明郵便で返還請求を行う
- 次回以降、児童手当の受取口座を自身名義に変更し管理する
また、離婚を検討中または協議中であれば、児童手当の取り扱いについては明文化することをおすすめします。
まとめ
児童手当は原則として子どもの養育のために使うべきものであり、配偶者が私的に使用していた場合は、返還請求や財産分与の調整が認められる可能性があります。ただし、実際の請求には使途の証拠が不可欠です。過去の使い道を立証するのは難しい場合もありますが、少しでも証拠を集めて、調停や弁護士相談を通じて冷静に対応しましょう。