飲食店などの公共空間で暴行被害に遭い、怪我を負った場合、被害者として加害者に対し民事上の慰謝料請求を行うことは法的に認められた正当な権利です。しかしながら、証拠が不十分、目撃者が協力をためらう、また事件から時間が経っているなどの状況が重なると、請求の現実性や訴訟コストをどう判断すべきか迷うことも多いでしょう。この記事では、そうした悩みを抱える方のために、暴行被害における慰謝料請求の判断ポイントと準備すべき事項をわかりやすく解説します。
暴行による慰謝料請求の法的根拠
民法第709条に基づき、不法行為によって身体的・精神的損害を受けた場合、加害者に対して損害賠償を請求できます。慰謝料はその中でも精神的苦痛に対する賠償として位置付けられており、暴行事件では重要な賠償項目となります。
請求可能な金額は、受傷の程度、後遺症の有無、通院期間、被害者の属性(年齢・職業)や、事件の悪質性、加害者の謝罪や反省の有無によって判断されます。
証拠の重要性と防犯カメラがない場合の対応
事件当日に店内に防犯カメラが設置されていない場合でも、以下のような証拠を集めることで請求の可能性は残されます。
- 診断書・通院記録
- 病院で撮影された怪我の写真
- 当時のメモ・日記・SNS投稿などの記録
- 目撃者の証言(メモ書きや録音含む)
- 店のレシート・クレジットカード利用履歴
証拠が複数組み合わさることで、信憑性が高まり、裁判所でも「暴行があった」と認められる可能性が高くなります。
目撃者の協力が得られない場合のリスク
目撃者が登壇をためらうケースは少なくありません。法的には証言を強制することはできないため、協力が得られない場合は、他の証拠との総合評価で補う必要があります。
ただし、目撃者が「見たことはあるが記憶が曖昧」としながらも陳述書を提出してくれるだけでも、一定の効果があります。弁護士を通じて丁寧に事情を説明し、プレッシャーをかけない形で協力を依頼することが肝要です。
費用対効果と請求金額の妥当性
慰謝料請求額として100〜180万円を想定する場合、弁護士費用(着手金+報酬)や訴訟費用とのバランスも検討する必要があります。通常、軽傷の暴行事件で認められる慰謝料は10〜50万円が相場ですが、悪質性や精神的影響が強ければ100万円以上も可能性はあります。
弁護士に依頼した場合、着手金として20〜30万円、報酬は回収額の20〜30%が一般的です。そのため、最低限の回収見込み額と費用を比較し、現実的な判断が必要になります。
時効と手続きのタイミング
民事での損害賠償請求の時効は原則として3年(2020年4月以降の民法改正後)。ただし、加害者が誰か不明だった場合は、加害者を知ったときから3年以内が適用されます。
事件発生から1年が経過している場合、時効までの残り期間を意識しつつ、早めに弁護士との相談と準備を進めることが重要です。
まとめ:冷静な判断と的確な準備が重要
暴行事件による慰謝料請求は、感情的なものではなく、証拠・コスト・時効・見込み金額を総合的に判断する必要があります。証拠が不十分でも、被害の実態が明らかであれば請求が認められるケースもあります。経験豊富な弁護士のサポートを得ながら、現実的かつ納得のいく解決を目指しましょう。