企業や店舗に対するクレームの表現によっては、刑法に抵触する可能性があります。中でも「今からそちらへ行くからな!」という発言が威力業務妨害罪にあたるのかどうかは、実務でもよく議論されるテーマです。本記事では、実際の判例や法律的な解釈をもとに、そのリスクについてわかりやすく解説します。
威力業務妨害罪とは?法律の基本を確認
威力業務妨害罪は、刑法第234条に規定されており、「威力を用いて他人の業務を妨害した者は、3年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」とされています。
ここでの「威力」とは、暴力に限らず、言動や態度などによって相手に恐怖心を与え、正常な業務遂行を困難にするものを含みます。つまり、言葉だけでも状況次第では威力と見なされる可能性があります。
「今から行く」は威力に該当するか?判断ポイント
一見すると、「今から行く」という言葉は単なる事実の告知のように思えますが、その言い方や文脈、相手の受け取り方によっては威力と判断される場合があります。
たとえば、「今からそちらへ行ってどうにかしてやる」など、攻撃的なニュアンスや脅迫的な口調で発せられた場合、相手が恐怖を感じて業務を中断したとすれば、威力業務妨害が成立する余地があります。
過去の事例でも、クレーム電話での「今から行くぞ」「直接話をつけに行く」などの発言が脅迫的と認定されたケースがあります。
実際の判例や警察対応事例
2020年以降の事例においても、「業務時間中に脅迫的な来店予告を電話で行った」ことにより、業務を一時中断せざるを得なくなった企業が告発に踏み切った例があります。
このような場合、電話録音や通話記録が証拠として提出され、発言の「威力性」が裁判所で争点になります。威力があったと認定されれば、刑事責任を問われる可能性も否定できません。
クレーム対応時に注意すべき言動
正当な苦情を伝えること自体は合法ですが、その伝え方に注意が必要です。以下のような言動は避けるのが無難です。
- 「今すぐ行くからな!」などの強い口調での来店予告
- 「お前の責任を取らせる」「ただじゃおかない」などの脅し文句
- 相手が恐怖を感じるような繰り返しの電話や訪問
もし不満や苦情がある場合は、まず文書での対応を検討する、または第三者機関(消費者センターなど)を通じて対応を依頼するのが理想的です。
言葉一つで罪に問われるリスク
たとえ暴力を伴わない言葉であっても、相手の業務を妨げるだけの影響力があれば、刑法上の「威力」として扱われる可能性があります。感情的になってしまうと、つい強い言葉を使ってしまいがちですが、その一言が法的リスクに発展することもあるのです。
まとめ
「今から行くからな!」という発言自体がすぐに威力業務妨害罪になるわけではありませんが、言い方や文脈、相手の受け取り方次第では、法的責任を問われるリスクがあります。正当なクレームであっても、冷静な言葉遣いと適切な手段を選ぶことが大切です。トラブルを未然に防ぐためにも、感情的な発言は避け、建設的な対話を心がけましょう。