職場でのストレスが健康状態に与える影響は深刻なものです。特に、病気療養中に嫌がらせや不当な扱いを受けることで体調が悪化するケースでは、法的措置を検討することが重要です。本記事では、病気の社員に対するパワハラや精神的苦痛が不法行為と認定される可能性や、慰謝料の請求が認められる事例について解説します。
病気療養中の社員に対するハラスメントの法的評価
民法第709条では、不法行為に基づく損害賠償が規定されており、「故意または過失によって他人の権利・利益を侵害した者」に対し、損害賠償請求が可能です。上司が体調を悪化させるような精神的圧力をかけた場合、その行為が不法行為と認定される可能性は十分にあります。
また、労働契約法第5条により、使用者は労働者の安全と健康を確保する義務(安全配慮義務)を負っています。病気を抱えた社員にストレスを与える行為は、これに違反する可能性があります。
刑法上の観点から見た嫌がらせ行為
上司による継続的な嫌がらせが「傷害罪」(刑法第204条)に該当する可能性も考えられます。身体的暴力がなくても、精神的苦痛により血圧上昇や鼻血が出るなど、身体的影響があれば、因果関係が証明されれば刑事責任が問われることもあります。
さらに、脅迫や強要といった構成要件に該当すれば、それぞれの罪での立件も視野に入るため、記録の保存と証拠確保が極めて重要です。
慰謝料請求の可否と判例
過去の裁判では、上司の暴言や不当な対応によりうつ病や自律神経失調症を発症し、慰謝料の支払いが命じられた例があります。金額は事案によって異なりますが、数十万円から数百万円規模の慰謝料が認められた判例もあります。
例えば、心疾患の既往がある社員に対して業務命令を繰り返し行い、悪化させた行為により、慰謝料請求が一部認容された事例もあります。
証拠の確保と相談先
メールや通話記録、メモ、診断書など、ストレスの原因と健康悪化との因果関係を証明する証拠は必須です。スマートフォンの録音機能やLINEのログなども有効です。
弁護士、労働基準監督署、地方自治体の労働相談窓口などに早めに相談することが望ましく、第三者の視点からの助言を受けることで法的手続きを円滑に進めることができます。
会社内での対応と予防策
社内のコンプライアンス部門やハラスメント相談窓口への相談も有効です。直接的な対応が難しい場合には、産業医の診断書を提出し、業務軽減や休職措置を検討してもらうことも一つの手段です。
会社には、社員の健康を守る責任があるため、体調が万全でない社員に対し無理な対応を強いることは、企業全体のリスクにもなり得ます。
まとめ
病気療養中の社員に対する嫌がらせは、民事上の不法行為や刑法上の犯罪に該当する可能性があり、慰謝料請求の対象にもなります。体調悪化が深刻な場合は、証拠を確保したうえで、弁護士や労働基準監督署に相談することが重要です。自分の身と健康を守るために、適切な対応を早めに検討しましょう。