企業にとって、従業員が業務中や通勤中に人身事故を起こすことは決して他人事ではありません。適切な対応を怠ると、法的・社会的責任を問われるだけでなく、企業の信頼にも大きな影響を及ぼします。本記事では、従業員による人身事故発生時に企業として取るべき対応と、リスク管理のポイントについて解説します。
人身事故発生時に企業が取るべき初期対応
まず重要なのは、事故直後の対応です。加害者である従業員に対しては冷静な事情聴取を行い、事故の発生状況、当時の運転状況、警察への届出の有無などを確認しましょう。事故に関する情報を正確に把握し、記録として残すことが重要です。
被害者がいる場合、企業側からもお詫びと被害状況の確認を行い、必要に応じて保険会社と連携しながら誠実な補償対応を進める姿勢が求められます。
示談交渉は誰が行うべきか?
事故後、加害者が個人的に示談を進めるケースもありますが、企業の関与が必要な場合は、必ず上司や法務部に報告し、会社としての方針を定めることが鉄則です。
とくに、免許停止歴がある従業員が保身のために勝手に示談を試みた場合、会社の信用を傷つける恐れがあります。社内規定があれば、それに則って懲戒処分を含む対応も検討しましょう。
加害者が会社に報告せず保身を図った場合のリスク
事故報告を怠り、示談を依頼するなどの行動は、企業のコンプライアンス違反リスクを高めます。その従業員の行為が違法性を帯びていた場合、企業側にも使用者責任が問われる可能性があります。
こうした事例は、社内の「事故報告義務違反」として処分の対象にもなり得ます。日頃から事故発生時のフローを明確にし、従業員に共有しておくことが重要です。
保険による補償と被害者への対応
企業が加入している自動車保険や任意保険の内容を確認し、補償範囲を明確にしておきましょう。むち打ちなどの後遺症が残るケースでは、長期的な通院が必要となる場合もあり、保険会社との調整も継続的に発生します。
「誠意ある対応」が信頼を生むため、担当者が定期的に状況確認や連絡を行うといった配慮も大切です。
再発防止に向けた取り組みと教育の強化
免許停止歴のある従業員が再び重大事故を起こした場合、企業の管理責任が問われる可能性が高くなります。そのため、採用時・更新時の運転履歴の確認や、定期的な交通安全講習、社内運転ルールの整備などが求められます。
実際に事故を起こした事例を基にした研修を行うことで、従業員のリスク意識向上にもつながります。
まとめ|企業としての姿勢が信頼を築く
従業員による人身事故は、企業にとって大きな危機ですが、その対応次第で被害者との信頼関係や社会的評価を守ることが可能です。
会社に無断で自己判断をした従業員の行動には毅然とした対応をしつつ、被害者には誠意ある補償と丁寧な対応を心がけることが、企業としての責任の果たし方です。今後に備え、社内体制の見直しと教育体制の強化を進めましょう。