企業活動の中で、登記簿謄本(全部事項証明書)を閲覧・取得する機会は珍しくありません。しかし、取得した情報をどのように扱うかによっては、法的なリスクや情報漏洩の問題に発展する可能性があります。特に、他人にそのまま転送したり、個人の連絡ツールを用いた共有が懸念されます。本記事では、全部事項証明書の取扱いと法的な観点からの注意点について解説します。
全部事項証明書とは何か?
全部事項証明書とは、会社の基本的な情報(商号、本店所在地、目的、役員構成など)を網羅的に記載した登記簿の写しです。法務局で誰でも取得可能であり、公開情報としての性質を持ちます。
そのため、入手自体や内容を第三者に見せることが直ちに違法とは限りません。ただし、「誰に」「どのように」提供するかに応じて、リスクが生じるケースもあります。
第三者に送信することの法的リスク
基本的に、全部事項証明書は公開情報であるため、送信自体が法律違反とはなりにくいです。しかし、会社の業務内で取得したものを、業務目的以外で使用・外部に送信した場合は、「守秘義務違反」「コンプライアンス違反」などの問題が生じる恐れがあります。
たとえば、損害保険会社の社員が個人目的で証明書を撮影しLINEで送信した場合、所属企業の規定に違反して処分対象となる可能性があります。
LINEや個人端末での送信が問題視される理由
問題となるのは「送信手段」です。たとえ内容が公開情報でも、個人のスマートフォンで写真を撮り、LINEなどの外部アプリで送信する行為は、情報漏洩リスクが高まるため、組織内で厳しく禁じているケースが多く見られます。
とくにLINEは個人の利用が多く、送信履歴が残る、アカウントの乗っ取りリスクがあるなど、情報管理上の不備とされることが多いです。
職務上の情報取り扱いに関する社内規定
損保会社や金融系企業では、「情報管理規程」「IT利用規程」「個人情報保護規程」などを通じて、社内外への情報の持ち出しや送信方法が細かく定められています。
仮に法的にセーフでも、これらの社内ルール違反は「懲戒処分」「注意・減給」の対象になることもあるため注意が必要です。
リスクを避けるために心がけるべきこと
- 登記情報は業務上必要な場合にのみ扱う
- 個人端末での撮影・送信は避ける
- やむを得ず外部に共有する場合は、正式な手段(PDF化しメールで送付など)を利用
- 企業の情報管理規定を常に確認する
また、送信前に上司や法務部に確認することも推奨されます。
まとめ:公開情報でも扱いには注意が必要
全部事項証明書は誰でも取得できる公開情報である一方、業務上で入手したデータを個人の判断で送信することは慎重を要します。特に企業に属する立場であれば、法的な問題よりも社内ルール違反のほうが大きなリスクとなることがあります。トラブルを防ぐためにも、取り扱いには十分な注意と確認が必要です。