近年、高齢化が進む中で、刑務所にも80歳を超える受刑者が増加しています。では、そのような高齢者も若年受刑者と同様に作業を義務付けられているのでしょうか?本記事では、日本の刑務所における高齢受刑者の処遇や作業の実態について詳しく解説します。
刑務所における作業の基本制度
日本の刑務所では、原則として受刑者に対して作業義務が課せられます。これは「懲役刑」または「禁錮刑(作業が附される場合)」の受刑者が対象であり、職業訓練や軽作業など多岐にわたる業務が行われています。
受刑者の作業は刑の一環であり、更生・社会復帰を目的としています。ただし、受刑者の身体的・精神的状態によっては作業内容や負担が調整されます。
高齢受刑者の増加と背景
高齢者の刑務所入所者数は年々増加傾向にあり、法務省の統計でも70歳以上の受刑者数が全体の1割近くを占めるようになっています。その背景には、孤独や経済的困窮、認知症などによる軽犯罪の増加があります。
中には「出所後に生活ができない」と自ら再犯するケースもあり、いわゆる“刑務所がセーフティネット化している”とも言われます。
80歳を超える受刑者も作業をするのか?
原則として、80歳を超えていても健康状態に問題がなければ、他の受刑者と同様に作業が割り当てられます。ただし、実際には以下のような配慮がされます。
- 健康診断による作業可否の判断
- 体力に応じた軽作業(封入・清掃・梱包など)
- 車椅子使用者や要介護者には作業免除や代替措置
つまり、義務として作業はありますが、高齢や病気により困難な場合は個別判断がされるというのが実態です。
高齢受刑者専用の施設と処遇
高齢者の受刑者が増えたことにより、現在では高齢者に特化した処遇を行う刑務所も整備されています。代表的なものに岡崎医療刑務所(愛知県)や東日本成人矯正医療センター(埼玉県)があります。
これらの施設では、医療体制が整備され、介護職員が常駐するほか、認知症に対応した特別処遇なども行われています。また、作業の強制よりも、リハビリ的な活動や生活支援が中心となっているのが特徴です。
作業免除の実例と条件
以下は、実際に作業免除が認められた高齢受刑者の例です。
- 82歳男性、心疾患と認知症を併発 → 作業免除、リハビリ活動のみ
- 79歳女性、慢性関節リウマチ → 軽作業に限定し、作業時間も短縮
免除の可否は、医師の診断書や刑務所内の健康評価をもとに判断されます。受刑者本人の希望や意欲も加味される場合があります。
まとめ
80歳を超える受刑者であっても、健康状態に問題がなければ基本的には作業を行うことになります。しかし、実際の運用では個別の事情を考慮して、作業免除や軽作業への配慮がなされています。今後ますます高齢受刑者が増加する中で、より柔軟で人道的な処遇体制が求められています。