交通事故で被害者になり、愛車が廃車になってしまった場合、「満額補償される」と思っていたのに、提示された金額が予想よりはるかに少なかった――そんな経験をした人は少なくありません。この記事では、10:0の事故でも車の時価額しか支払われない仕組みや、納得できない場合の対処法について解説します。
なぜ「新車価格」ではなく「時価額」なのか
事故で車が全損（廃車）となった場合、加害者側の保険会社は原則として「事故発生時の車の時価額」で賠償します。これは保険業界の実務に基づいた運用であり、新車価格や購入価格がいくらであったかは関係ありません。
たとえば、10年前に300万円で購入した車の時価が100万円であれば、保険会社から支払われるのは100万円となります。これは、「被害者の損害＝経済的な価値の減失分」として扱われるためです。
実際に起こる「損をしたように感じる」ケース
長く大切に乗ってきた車を、突然事故で失い、しかも補償額が低額。これは精神的にも金銭的にも納得しづらいものです。
例えば、被害者が丁寧に整備・保管していた300万円の輸入車が、10年後に100万円の時価とされ、補償額がその金額にとどまった場合、「実際の価値はもっとあるのに」と感じるのは自然なことです。
納得できない場合の対処法
提示された時価額に納得できない場合は、以下のような対処が考えられます。
- 中古車査定書を提出: 複数の中古車販売店などで査定を受け、その価格を保険会社に提示することで再評価を促すことができます。
- 同等車両の市場価格を示す: オートオークションや中古車サイトの情報などを用いて、同車種・年式・走行距離の相場を伝える方法です。
- 交渉が難航する場合は弁護士へ相談: 特に損害額が大きい場合は、交通事故案件に詳しい弁護士への相談が有効です。
車両保険の活用と備え
被害者であっても、加害者の保険だけでは希望する補償が受けられないケースがあります。そうした場合に備え、自身の任意保険に「車両保険」を付けておくと、保険会社から自分の車の修理費や買い替え費用がカバーされる可能性があります。
ただし、車両保険でも「時価額まで」の補償であることが多く、特約（新価特約・車両新価保険など）を付けておくと、新車価格で補償される場合があります。
まとめ
たとえ過失が0であっても、事故で廃車になった車に対する補償は「時価額」が基準です。納得できない場合は、市場価値や査定情報をもとに交渉を行いましょう。また、今後のリスクに備えて車両保険や特約の検討もおすすめです。「事故の損」を少しでも減らすには、制度の理解と備えがカギになります。