インターネット上での誹謗中傷に対して、投稿者を特定するための「発信者情報開示請求」が注目を集めています。本記事では、開示請求が届くまでの期間やそのプロセス、知っておくべきリスクや注意点について、実例も交えて解説します。
発信者情報開示請求とは何か?
発信者情報開示請求とは、ネット上での違法な投稿(誹謗中傷、名誉毀損、プライバシー侵害など)に対して、その投稿者の情報を開示させる法的手続きです。
対象は、主にSNSや掲示板、動画投稿サイトなどで、IPアドレス、アクセスログ、契約者情報などが含まれます。
請求は投稿されたサービス提供者(例:X(旧Twitter)、YouTube、5chなど)を通じて行われます。さらに、その後にプロバイダ(インターネット接続事業者)への請求を行う「二段階開示請求」が一般的です。
開示請求が届くまでの期間は?
開示請求の手続きには複数のステップがあり、時間もかかります。以下は一般的なスケジュールの目安です。
手続き | 期間目安 |
---|---|
①投稿から弁護士相談・証拠収集 | 1〜2週間 |
②一次発信者(SNS運営者等)への開示請求 | 1〜2ヶ月 |
③IP取得後のプロバイダ特定・開示請求 | 2〜3ヶ月 |
④プロバイダから通知・裁判所の判断 | 1〜3ヶ月 |
合計期間:最短でも3ヶ月、長ければ半年〜1年近くかかるケースもあります。
どのように通知が届くのか?
発信者情報開示請求が行われると、プロバイダから「意見照会書」という文書が書留郵便で届きます。この書類には、
- 開示請求の概要
- 発言内容と投稿日時
- 意見提出期限(約2週間)
が記載されており、提出期限内に「開示に同意しない理由」などを記載して返信することが可能です。なお、返信しない場合は黙示的に同意と見なされるリスクがあります。
開示請求が認められた後の流れ
開示請求が裁判所に認められると、プロバイダは発信者情報を請求人に提供します。その後は、損害賠償請求や刑事告訴といった法的手続きに発展する可能性があります。
実際に、開示後に50万円〜300万円の損害賠償を命じられた判例も存在しています。また、刑事事件として書類送検されたケースも報告されています。
発信者が取れる対応と注意点
万が一、意見照会書が届いた場合には、以下の対応が求められます。
- 内容を落ち着いて確認する
- 弁護士に相談する(ネット誹謗中傷に強い事務所が望ましい)
- 意見照会書に期限内に返信する
間違って身に覚えのない投稿についても、返信を怠ると開示されるリスクがあるため注意が必要です。
まとめ
誹謗中傷に対する発信者情報開示請求は、証拠収集から裁判所の判断まで一定の期間を要し、一般的には3ヶ月〜半年以上かかる場合が多いです。請求が届いた際は慌てず、内容をよく読み、弁護士など専門家に相談することが重要です。今後もネットリテラシーを高め、表現の自由と責任のバランスを意識していく必要があります。