図書館で本を返却したのに未返却扱い?弁償請求トラブルと法律上の責任の考え方

図書館で本を返却したはずなのに「返していない」と言われ、弁償を求められる──このようなトラブルは誰にでも起こり得るものです。この記事では、返却確認の証拠がない場合の法律的な責任の所在、いわゆる「危険負担」がどちらにあるのか、また利用者としてどう対応すべきかを、わかりやすく解説します。

返却済みか否かが争点となる場合の基本的な考え方

図書館の利用規約では、利用者が期限までに資料を返却する義務があると明記されています。しかし、返却した・していないが争点になる場合は、立証責任の所在が問題となります。

民事的な考え方では、「請求する側が請求の根拠を立証しなければならない」というのが原則です。つまり、弁償を求める図書館側が、返却がなされていないことを証明する責任があります。

図書館側の管理ミスは想定外?公的機関ならではの対応

公立図書館などでは、管理体制が整っており、貸出返却の記録がシステムで厳密に管理されていることが多いです。そのため、「返却処理にミスはない」という前提で対応されることがあります。

しかし、過去には返却ポストでの読み取りエラー本の棚戻しミスなどが原因で、返却済みにもかかわらず未返却と扱われた事例も存在しています。こうした場合には、利用者の側で返却の事実を何らかの形で証明する必要が出てきます。

証拠がない場合、利用者はどう対応すべきか?

返却の証拠がない場合、完全に図書館側に責任を問うのは難しいですが、次のような対応策があります。

  • 図書館内の防犯カメラ映像が残っているか確認する
  • 他の利用者や家族が返却の場にいた場合、証言を用意する
  • 返却ポストの利用日時がわかるレシートやメモがあれば提出

また、穏便に解決を図りたい場合は、「使用頻度の高い図書館で今後も利用したい」旨を伝え、相手方の管理体制に過失がないか丁寧に確認するのも一つの方法です。

危険負担はどちらにあるのか?法律的な位置付け

このようなケースにおいては、民法上の危険負担という概念は、売買契約や賃貸借契約など財産の移転を伴う契約に関して論じられることが一般的です。図書館の貸出においては民法の「準委任契約」的な性質を持つとされ、必ずしも危険負担の直接適用はされません。

しかし、図書館が貸出業務を提供し、利用者が返却義務を負う以上、「善管注意義務(善良な管理者としての注意義務)」が双方に発生します。どちらが注意義務を怠ったか、という観点から判断されることになります。

法的トラブルに発展した場合の相談先

どうしても解決しない場合には、以下のような相談機関を活用することができます。

  • 国民生活センター:公的トラブルに強い
  • 法テラス:無料法律相談に対応
  • 弁護士会の法律相談窓口

また、行政の設置する図書館であれば、市民相談窓口などに苦情を申し立てることも可能です。

まとめ

図書館で「返却した・していない」が争点となった場合、法律的には弁償を求める側に未返却の立証責任があります。ただし、証拠がない場合は話し合いでの解決が中心となり、トラブルを長引かせないためにも、冷静かつ丁寧に対応することが大切です。少しでも心配があれば、専門家への相談も視野に入れて、納得のいく対応を目指しましょう。

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