家族経営の中小企業では、夫婦間での情報共有が不十分なまま、株式や経営権が一方的に動かされるケースがあります。特に、妻が専業主婦で経営に関与していない場合、重大な経営判断が知らぬ間に進められてしまうことも。本記事では、配偶者が勝手に会社を売却しようとしている場合の対応策、株式・財産の保全方法、そして弁護士に相談する際のポイントを解説します。
まず確認すべきは「株主構成」と「株式割合」
会社売却の実行には、原則として「株主の同意」が必要です。株式会社であれば、株式の過半数を持つ者が取締役を選任・解任でき、株主総会の決議にも影響します。もし夫が単独で過半数以上の株式を保有している場合、売却の決定を実行されるリスクがあります。
対策:まずは母親が現在保有している株式の割合、及び父親が保有している割合を会社登記簿謄本や株主名簿、過去の株式譲渡契約書などで確認しましょう。
株式が減った?「勝手に株を増やされた」可能性の検証
株式の希釈(持ち株比率の低下)は、新株発行などで行われることがあります。もし母親が知らないうちに株数が減ったようであれば、新株発行があった可能性があります。新株発行は取締役会決議で可能ですが、手続きに不備があれば無効とされる場合もあります。
不正な株式発行に関しては、商法違反や信義則違反が問われることもあり、法的措置を検討できます。
会社の売却を阻止・保留させるには?
会社売却は、株式の譲渡または事業譲渡という形で進められます。母親が一定の株式を保有しているのであれば、譲渡契約の差止め請求や、取締役会・株主総会の手続違反の追及が可能な場合もあります。
弁護士を通じて売却の手続状況を確認し、緊急時には仮処分申立て(売却差止め)を検討することが重要です。
家庭内の経済的支配・資産隠しへの対応
父親が母親の口座にお金を振り込まない、財産を開示しないという場合、婚姻費用分担請求や、家庭裁判所への調停申立てによる財産開示が可能です。
また、離婚を選択しない場合でも、別居状態に近い経済的断絶があれば生活費請求が成立する可能性が高いです。
弁護士に相談する際のコツ
弁護士に相談する際は、事実を整理したメモを用意するとスムーズです。以下のような情報をまとめておきましょう。
- 会社の概要(法人名・所在地・登記情報)
- 母親と父親の株式保有割合
- これまでの経営の関与状況
- 売却の動きに関する証拠(メール、LINE、会話録音など)
- 経済的に困っている証拠(収入がない、振込がない等)
無料法律相談窓口(法テラスなど)の活用もおすすめです。初回相談無料の弁護士事務所も多いため、早めの行動が鍵になります。
まとめ
家族経営の会社を配偶者が一方的に売却しようとしている場合でも、法的に対抗できる手段は複数存在します。株式割合の確認、売却手続きの監視、婚姻費用請求、そして弁護士との連携が重要です。母親の権利を守るためにも、今ある情報を整理し、早期に法的対応を検討することが不可欠です。