医療現場におけるミスや説明不足は、患者や家族に大きな不安をもたらします。とくに「医療過誤が疑われるのに詳細を教えてもらえない」といった状況は、法的にも倫理的にも重大な問題です。この記事では、医療過誤に関する基本知識から、情報開示を拒否された場合の対処法まで、専門的視点でわかりやすく解説します。
医療過誤とは何か?
医療過誤とは、医療行為の過程で医師や医療機関の注意義務違反により患者に損害が生じることを指します。単なる治療の失敗ではなく、「予防できた過失」があったかどうかが重要です。
たとえば、手術中に必要な確認を怠って異物が体内に残る、薬剤の投与量を誤るといったケースは医療過誤に該当する可能性があります。
患者が有する情報開示の権利
患者には、自分の診療に関する情報を知る「インフォームド・コンセント(説明と同意)」の権利があります。これは日本医師会の倫理規定や、厚生労働省の指針でも明示されています。
診療情報提供請求権として、カルテ、検査結果、看護記録などの開示を求めることが可能です。病院側が不当に拒否することはできません。
医療機関が情報開示を拒否する場合の対処法
情報開示を「裁判で請求するまで応じない」と言われた場合は、まず文書で正式な情報開示請求を行いましょう。その際には書面で記録を残すことが大切です。
また、医療安全支援センターや都道府県の医療相談窓口に相談することで、第三者を介して交渉が進むこともあります。
弁護士を通じた法的対応
病院側が開示に応じない、あるいは過誤の認定が難しい場合は、医療問題に詳しい弁護士へ相談するのが最も確実です。法律の専門家を通せば、証拠保全(カルテの仮差押えなど)も可能になります。
また、日本医療弁護団など、医療訴訟に精通した団体が各地にありますので、無料相談から活用すると良いでしょう。
医療ADR(裁判外紛争解決)という選択肢
訴訟に進む前に「医療ADR(裁判外紛争解決手続き)」という制度を利用することも可能です。第三者機関が間に入り、病院と患者の対話や和解を促進します。
たとえば、日本医療機能評価機構の「医療安全推進センター」では、専門家が仲裁役となり、情報開示と補償の合意に向けた話し合いが行われています。
実例:開示拒否から裁判で勝訴したケース
ある地方病院では、手術後に重度の後遺症が残ったにもかかわらず、詳細説明を拒否されました。患者側はカルテ開示を請求し、弁護士を通じて証拠保全と訴訟を実施。その結果、過失が認定され和解金が支払われました。
このように、冷静かつ段階的な対応が結果につながることも少なくありません。
まとめ:患者の権利を守るために
医療過誤が疑われる場合、まずは感情的にならず、自分の権利と制度を理解することが重要です。診療情報の開示請求から始め、必要であれば弁護士の助けを借りて、適切な手続きを踏みましょう。
医療は信頼で成り立つ関係ですが、トラブル時には法的な枠組みで権利を主張することが、より良い医療の実現にもつながります。