職場のパワハラが原因でうつ病を発症し、長期間の療養を余儀なくされるケースは少なくありません。特に公務員や企業の正社員など、一定の雇用保障がある立場であっても、最終的に「分限免職」が適用される可能性があります。本記事では、パワハラ認定がなされないままうつ病で長期休職し、最終的に免職処分となる可能性や、法的対応について詳しく解説します。
分限免職とは?制度と現実の違い
「分限免職」とは、職員が心身の故障などによって職務の遂行が困難な状態が続いた場合に、雇用主側が行う解雇に類する措置です。法律上は一定の手続きを経て正当な理由があれば可能ですが、実際には非常に慎重に扱われます。
例として、地方自治体職員がうつ病により3年間休職を続けた結果、医師の意見や復職可能性の見通しを踏まえて、最終的に分限免職となったケースがあります。この場合も、パワハラ認定の有無にかかわらず、体調の回復が見込めないと判断されたことが決定的な要因でした。
パワハラが原因でも、認定がなければ分限免職は成立する?
たとえうつ病の原因が上司によるパワハラであっても、職場内で正式に「パワハラ」と認定されていない限り、人事上の判断には反映されにくいのが現実です。
そのため、診断書に「パワハラによるうつ病」と記載されていても、組織が独自調査や検証を行わなかった場合には、病気単体での長期休職として扱われます。この場合、制度上の条件を満たせば、分限免職は実務上も「可能」です。
「裁判を起こす」と伝えたら対応は変わるか?
職場に「裁判を起こす」と告げた場合、組織としては法的リスクを回避するために、慎重な対応へと舵を切るケースが多いです。特に以下のような影響があります。
- 社内の調査を改めて実施する可能性が高まる
- パワハラ加害者への聞き取りや、被害者の主張を記録する動きが生まれる
- 裁判沙汰による評判リスクを嫌い、「退職合意」など柔軟な着地を探る
しかし、裁判をちらつかせるだけではなく、実際に証拠(録音・メモ・診断書など)を持っていることが前提です。労働組合や弁護士のサポートを受けることで、より強い交渉力を持つことができます。
長期休職後に裁判を起こすメリットとリスク
3年休職し、免職処分を受けた後に裁判を起こすことも法的には可能です。実際に、退職後に訴訟を起こし、慰謝料や損害賠償を勝ち取った例もあります。
ただし、以下の点には注意が必要です。
- 証拠が揃っていないと不利(録音・第三者証言などが鍵)
- 訴訟には時間と費用、精神的な負担が伴う
- 実際の損害額や慰謝料が予想より低いことも
とはいえ、法的手段は「泣き寝入り」を防ぐ最後の砦となり得ます。弁護士への初回相談は無料のことも多いため、早めに情報収集することが大切です。
実例紹介:パワハラと分限免職の法的闘い
ある民間企業で、うつ病を発症した社員が3年間の休職後に「勤務困難」として解雇されました。本人はパワハラによる疾患と主張し、診断書・上司の暴言録音を証拠に、労災申請および損害賠償請求訴訟を提起。結果、労災認定と一部損害賠償が認められ、解雇も無効となりました。
このように、分限免職は必ずしも「終わり」ではありません。原因の根拠や手続きの妥当性を精査することで、逆転の可能性は存在します。
まとめ:分限免職とパワハラをめぐるリアルな判断軸
パワハラによってうつ病になり長期休職した場合、実務上でも分限免職は「あり得る選択肢」です。職場がパワハラを認定しない限り、あくまで健康状態に基づく判断が優先されるためです。
しかし、「裁判を起こす」との意思表示や、証拠の提示によって対応は変わり得ます。泣き寝入りせず、証拠を整えながら第三者(弁護士・労働組合など)と連携して進めることが、今後の選択肢を広げる第一歩となるでしょう。