事実婚と相続のリアル:子どもにマンションを遺すために知っておくべき法律知識

近年、法律婚ではなく事実婚という形を選ぶ家庭も増えてきました。特に、子どもの姓を変更したくない場合など、事情は家庭ごとにさまざまです。しかし、事実婚だからこそ起こり得る相続上のトラブルや見落としがちなリスクについては、事前に知識を持っておく必要があります。

事実婚と法律上の配偶者の違い

日本の民法では、婚姻届を提出していない「事実婚」の相手は、原則として法定相続人にはなりません。つまり、たとえ一緒に暮らし、扶養に入っていたとしても、正式な婚姻関係でなければ、相手の財産を自動的に相続することはできないのです。

このため、配偶者に遺産を残したいと考えるならば、遺言書の作成や生前贈与などの対策が必須になります。

子どもと夫の間に法的な親子関係がない場合の相続権

事実婚で、妻の連れ子が夫と養子縁組していない場合、子どもは夫の法定相続人ではありません。つまり、夫が亡くなっても、その子には相続権が発生しません。養子縁組がされていれば、実子と同じく法定相続人となります。

子どもが夫の姓を変えたくないなどの事情がある場合でも、養子縁組に際して名前の変更を回避する方法として「氏の変更許可申立て」が家庭裁判所で認められるケースもあります。

遺言書でできることとその限界

公正証書遺言を活用することで、法定相続人でないパートナーや子どもに財産を遺すことは可能です。遺言書があれば、相続人以外にも遺贈が可能で、確実に意向を反映させることができます。

ただし、法定相続人が存在する場合(例:夫に兄弟姉妹がいるなど)、遺留分という最低限の取り分を主張される可能性があるため、専門家と相談してバランスの取れた内容にする必要があります。

夫より先に妻が亡くなった場合の財産の流れ

妻が先に亡くなった場合、マンションなどの財産は子どもに相続されます。これは法定相続人であるため問題はありません。ただし、名義が共有や夫名義になっている場合は注意が必要です。

たとえば、マンションが夫名義の場合、妻の死亡後に子どもが相続することはできず、夫の死亡を待ってからの相続や遺言による遺贈が必要になります。

事実婚での相続対策:今からできる具体的アクション

  • 公正証書遺言の作成(双方が個別に)
  • 養子縁組を検討(名前の変更を避ける手続きも相談)
  • マンションの持分整理(共有名義や贈与)
  • 生命保険の受取人指定(相続とは別枠で受け取れる)

これらは家庭の事情に合わせて最適な方法を検討する必要があるため、司法書士や行政書士、弁護士と相談して進めるのがおすすめです。

まとめ:事実婚でも家族を守る法的準備を

事実婚であっても、きちんと法的準備をすることで大切な人に財産を遺すことができます。公正証書遺言の作成は最も重要なステップです。また、家族の形に合わせて柔軟な対策を講じることで、後悔のない相続が実現できます。

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