玉掛け用具の点検と記録義務|安衛法に基づく正しい管理と実務のポイント

玉掛け用具の管理は労働安全衛生法に基づく重要な業務の一つです。日常の点検が義務付けられていることは知られていますが、「点検表をつける義務はあるのか?」「記録を保存しなければならないのか?」といった具体的な疑問も多く寄せられます。この記事では、実務上の対応を含めて詳しく解説します。

労働安全衛生法における玉掛け用具の点検義務

労働安全衛生法および安衛則では、クレーンや移動式クレーン、揚貨装置等の使用において「使用前点検」を義務づけています。玉掛け用具(ワイヤーロープ・フック・シャックルなど)もその対象であり、使用前に損傷・摩耗・変形等がないかを確認しなければなりません。

特に安衛則第151条の22では、「事業者は、労働者に対し、玉掛け用具を使用する前に点検を行わせなければならない」と明記されています。この点検は、現場ごと・作業ごとに行う必要があります。

点検記録の作成義務はあるのか

結論から言えば、日常の点検(使用前点検)に対しては、法律上、点検記録の作成義務までは明示されていません。しかし、月次や定期の点検(たとえば月1回の保守点検)においては、記録を残すことが推奨されており、社内ルールで義務化している企業もあります。

また、特定の業種(建設業など)や、元請・下請間の安全協定により、記録の保存が事実上求められるケースもあるため注意が必要です。

点検表をつけることのメリットと実務上の効果

点検記録を残すことには、次のようなメリットがあります。

  • 安全意識の向上とヒューマンエラーの予防
  • トラブル発生時の証拠としての有効性
  • 労働基準監督署などの立入検査時の備え

たとえば、ある建設会社では点検表に基づいて毎朝チェックリストを記入する運用をしており、労災ゼロの実績を10年近く継続しています。

点検記録の保存期間と管理方法

点検記録の保存義務は法的にはありませんが、保存する場合は最低1年間を目安にするのが一般的です。建設現場などでは、工事完了まで保管し、必要があればその後3年間保存する企業もあります。

紙での保存だけでなく、デジタル化(Excelや点検アプリなど)による管理も進んでいます。クラウド保管を導入することで、現場と事務所の連携もスムーズになります。

点検の実施内容とチェックポイント

日常点検では以下の点をチェックするのが基本です。

  • ワイヤーロープに切断や素線の飛び出しがないか
  • フックの変形・摩耗・割れがないか
  • シャックルやアイボルトのゆるみがないか
  • マーキング・識別表示が判読可能か

これらは現場の作業者が視認・触診で確認できるレベルの項目であり、特別な資格は不要です。

まとめ:安全管理の一環として点検記録を活用しよう

玉掛け用具の点検は、法令により毎日義務付けられていますが、点検表の記録や保管については明文化された義務はありません。ただし、実務上の安全性確保やトラブル対応、監査対応の観点からは記録を残すことが非常に有効です。

法令+現場実態のバランスを取りながら、安全な作業環境を維持することが、企業にとって最も重要です。自社に適した運用ルールを整備して、安全管理体制をより強固なものにしていきましょう。

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