スマートフォンのゲームやアプリで、未成年が保護者の同意なく高額課金を行うトラブルは年々増加しています。消費生活センターやプラットフォームへの相談で返金が認められることもありますが、すべてのケースで通用するとは限りません。この記事では、未成年者取消権の基本と、返金を求めるために取れる現実的な対応策をわかりやすく解説します。
未成年者取消権とは?
民法第5条では、「未成年者が法定代理人(親など)の同意を得ずに行った法律行為は、取り消すことができる」と定められています。つまり、保護者の同意がなければ、契約は原則として取り消すことが可能です。
この取り消しは一方的に主張すればよく、相手方の同意は不要です。ただし、以下のような例外には注意が必要です。
- 保護者がアカウントの利用や決済を黙認していた場合
- 未成年者であることを隠して年齢を偽っていた場合
- 保護者の同意があったように見える証拠がある場合
AppleやGoogleの返金方針と限界
App Store(Apple)やGoogle Playでは、課金に関する返金申請が可能ですが、1回きりの例外対応にとどまることが多く、返金保証ではありません。
特に総額が高額(例えば10万円超)かつ繰り返された場合、Apple側が「保護者の管理責任によるもの」と判断して却下されることもあります。消費生活センターを通じて申請しても、Appleが内部基準で却下すれば、それ以上の行政的強制力は及びません。
ゲーム会社への直接交渉の可能性
プラットフォームでの返金が通らなかった場合、課金先となったゲーム会社への直接の返金交渉も検討の余地があります。たとえば、国内企業が運営するタイトルであれば、日本の消費者契約法や民法が適用されるため、未成年者取消権を主張する余地があります。
実際に、ゲーム会社に「保護者の同意がない未成年による契約であること」「支払い明細」「未成年である証明(学生証など)」を提示し、返金に応じた事例も報告されています。ただし、海外企業では対応が不透明な場合もあるため、日本語サポートの有無や利用規約の記載も確認が必要です。
弁護士依頼の検討は本当に無駄?
「弁護士に頼むと費用がかかるから無理」と考える人も多いですが、法律相談だけであれば30分5,000円前後で済むこともあります。特に、法テラス(日本司法支援センター)を通じれば、無料相談や費用立替制度も利用できます。
返金額が高額であれば、数万円の相談料で100万円以上の返金につながる可能性もあるため、一度は専門家に相談する価値は十分にあります。
具体的な返金交渉のステップ
返金交渉を進める際は、以下の手順を踏むのが効果的です。
- 未成年者が契約した証拠を整理(課金日時・額・画面キャプチャなど)
- 保護者の同意がなかったことを明示する
- AppleやGoogleへの返金申請履歴を残しておく
- ゲーム会社宛てに書面またはメールで正式な請求
- 消費生活センターや弁護士へ相談し、法的措置の示唆
返金を求める際は、冷静かつ丁寧な対応が信頼を得るカギです。感情的な訴えよりも、論理的で証拠に基づいた説明が効果的です。
まとめ:未成年者取消権は主張可能、戦略的な対応を
未成年が親の同意なしに行った課金は、民法上取り消しが可能ですが、現実にはプラットフォームや事業者の判断に委ねられる場面も多く存在します。Appleで返金が拒否された場合でも、ゲーム会社への交渉や法的手段を検討することで道が開ける場合があります。感情的に焦らず、証拠をそろえて冷静に対応することが、返金実現への第一歩です。