少額訴訟で一部請求する際の注意点と異議申し立て対応の実際

少額訴訟は、比較的簡便に60万円以下の金銭請求ができる制度として、個人間の金銭トラブルにおいて有効な手段です。今回は、総額100万円の貸し借りのうち、一部の50万円を少額訴訟で請求するという事例を元に、異議申し立てやリスクについて詳しく解説します。

少額訴訟で一部金額を請求することは可能か

少額訴訟の上限額は60万円ですが、総額がこれを超えていても、60万円以下の一部を選んで請求することは法的に可能です。たとえば、100万円の貸付金のうち50万円を先に請求し、残りを後日請求することもできます。

ただし、債権の一部のみを訴える場合は「残部を放棄したのか」「分割請求であるのか」が争点にならないよう、訴状に「一部請求」である旨を明示することが重要です。

異議申し立てが起こる確率とその背景

少額訴訟では、相手が判決内容に不服を持った場合、通常訴訟への移行を求めて「異議申し立て」をすることができます。この異議申し立てが行われる確率は明確な統計はありませんが、実務上は概ね1割前後と言われています。

しかし、相手が弁護士と相談していたり、支払い義務を否定したい事情がある場合は、異議申し立てされる可能性が高まります。例えば「借用書に記載ミスがある」「LINEのやりとりが曖昧」などの争点がある場合に多く見られます。

異議申し立て後も本人訴訟で続けることは可能

相手が異議申し立てをすると、手続きは通常訴訟へ移行します。この段階でも原告は弁護士をつける義務はありませんので、ご自身で手続きを続けることは可能です。

ただし、通常訴訟では民事訴訟法の手続きが複雑になり、証拠の提出や主張の構成に法的知識が必要になります。相手が弁護士を立ててきた場合は、心理的・技術的に不利になることは否定できません。

敗訴した場合のデメリットはあるか

少額訴訟で敗訴した場合の主なデメリットは以下の通りです。

  • 相手に対して返済を強制できない(当然ながら)
  • 一部費用負担(訴訟費用の分担や交通費等)
  • 残債務の請求がやや難しくなる(心理的な意味で)

ただし、少額訴訟に敗訴したからといって、残額の請求権が消滅するわけではありません。また、判決が出ていれば、それに基づく強制執行(差押え)も可能となるため、請求内容が正当であれば戦う価値は十分にあります。

勝訴後も重要な「回収」の視点

判決で勝っても、相手が支払わなければ意味がありません。支払督促や差押えなどの強制執行手続きも念頭に入れておくことが重要です。

特に相手の銀行口座や勤務先がわかっていれば、債権差押命令を裁判所に申立てることで回収が可能です。回収を見据えた準備が、訴訟と同じくらい重要です。

まとめ

少額訴訟で一部金額のみを請求することは可能であり、有効な手段となり得ます。ただし、相手の異議申し立てや弁護士の関与によって通常訴訟に移行する可能性もあるため、必要に応じて法律相談や法テラスの利用を検討するのも賢明です。準備と記録を整えたうえで、冷静かつ計画的に進めましょう。

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